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ITを学び直す社会人必見!「DX白書2021」から分かること①

2022年3月21日

DX白書2021を読み解く

2021年10月、情報処理推進機構は「DX白書2021」を発行しました。

この報告書には、DX(=デジタル・トランスフォーメーション)にかかわる国内外の最新動向がまとめられています。

この中では、いわゆる「DX人材」について、企業がどのような人材を求めているのか調査が行われています。

調査で明らかになったのは、企業がより必要としているのは、高いプログラミングスキル持ちAI(人工知能)の開発やデータサイエンスなどができる人材ではなく、こうした技術をもった人たちをまとめることができる「ITリテラシー」と「ビジネス力」を備えた人材ということです。

この記事では、DX白書を読み解きつつ、社会人になってITを学び直す人が目指すべき人材像について、解説します。

記事のポイント

  • 企業がより求めているのは「プロダクトマネージャー」と「ビジネスデザイナー」
  • 言い換えれば、「ITリテラシー+ビジネスの力」を備えた人材
  • エンジニアやプログラマーのような技術力はなくても、ITを生かす人材にはなれる
  • 社会人になってからITを学び直す人は、「プロダクトマネージャー」や「ビジネスデザイナー」を目指そう

DX白書2021とは?

DX白書2021とは、2021年10月に、ITパスポート試験などを実施する情報処理推進機構(以下、IPA)が発行した報告書です。

IPAは、これまでに、「AI白書」や「IT人材白書」を発行してきましたが、今回、初めてDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関する白書を取りまとめました。近年、DXの重要性が広く認識されるようになったことが背景にあります。

今回のDX白書のポイントは、DXをめぐる動向について、日本とアメリカの企業の比較調査を実施したことです。

DXに関して、アメリカは日本に先行して取り組みが進んでいるといわれています。

アメリカと日本の取り組み状況を比較することで、日本の置かれている現状や今後の指針を明らかにしようというのがDX白書の目的です。

DX白書は、日米企業のDXに関する取り組みを、「戦略」・「人材」・「技術」の3つ観点から比較して分析しています。

この記事では、特に「人材」に注目して、重要ポイントを解説していきます。

デジタル人材の7職種

DX白書では、DXを進める人材の職種を、以下の7種類に分類しています。

DX人材の職種

プロダクトマネージャー

デジタル事業の実現を主導するリーダー格の人材

ビジネスデザイナー

デジタル事業(マーケティング含む)の企画・立案・推進等を担う人材

テックリード

デジタル事業に関するシステムの設計から実装ができる人材

データサイエンティスト

事業・業務に精通したデータ解析・分析ができる人材

先端技術エンジニア

機械学習、ブロックチェーンなどの先進的なデジタル技術を担う人材

UI/UXデザイナー

デジタル事業に関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材

エンジニア/プログラマー

デジタル事業に関するシステムの実装やインフラ構築、保守・運用、セキュリティ等を担う人材

まず押さえておきたいのは、分類されている7職種すべてに、「プログラミング言語を使ったコーディングスキル」が求められているわけではないことです。

白書の中で言及はされていませんが、DX人材の7職種のうち、コーディングスキルが必須となるのは「テックリード」・「データサイエンティスト」・「先端技術エンジニア」・「エンジニア/プログラマー」の4職種です。

これら4職種は、「コーディングができないと仕事にならない」という職種です。

一方で、「プロダクトマネージャー」・「ビジネスデザイナー」・「UI/UXデザイナー」にとって、コーディングスキルは必須ではありません。

もちろん、他の職種の人材と協働するにあたって、プログラミング言語に関する理解は必要になりますし、自分でコーディングまでできる、という人はいるでしょう。

ですが、「プロダクトマネージャー」・「ビジネスデザイナー」・「UI/UXデザイナー」に求められているのは、コードを書くことではありません。

コードを書く必要が出てくれば、コーディングのプロフェッショナルである「エンジニア/プログラマー」にお願いすればよいのです。

DX人材を、コーディングスキルが必須かどうかで分けた場合、以下のように分類することができます。

DX人材の職種

コーディングスキルが必要

  • テックリード
  • データサイエンティスト
  • 先端技術エンジニア
  • エンジニア/プログラマー

コーディングスキルがなくてよい

  • プロダクトマネージャー
  • ビジネスデザイナー
  • UI/UXデザイナー

DX人材、IT人材、デジタル人材。呼ばれ方は様々ですが、こうした人材になるために、実は「プログラミング言語を使ったコーディングスキルは必須ではない」のです。

この点については、こちらの記事でも解説しています。

育成したい1位「プロダクトマネージャー」とは?

では、DX人材の7職種のうち、企業はどのような人材を求めているのでしょうか。

DX白書では、DX人材の7職種について、どの職種の人材が不足しているか企業に調査を行っています。結果は、以下の通りです。

出典:DX白書2021

7つの職種を、不足している(「大幅に不足している」・「やや不足している」)と回答した企業の割合が高い順に並べると、以下のようになります。

不足している職種

日本企業

  • プロダクトマネージャー:57.1%
  • ビジネスデザイナー:56.5%
  • データサイエンティスト:55.5%
  • テックリード:50%
  • 先端技術エンジニア:47.8%
  • エンジニア/プログラマー:47.5%
  • UI/UXデザイナー:44.4%

アメリカ企業

  • ビジネスデザイナー:43.3%
  • プロダクトマネージャー:39.6%
  • エンジニア/プログラマー:39.5%
  • テックリード:38.8%
  • 先端技術エンジニア:37.6%
  • UI/UXデザイナー:36.8%
  • データサイエンティスト:36%

全職種の不足感は、日本企業で40%台から50%台、アメリカ企業で30%台から40%台と、どの職種でも人材が不足していることが伺えます。

その傾向は日本企業で特に割合が高いようです。

注目したいのは、日米企業ともに、不足している職種の1位と2位に、「プロダクトマネージャー」と「ビジネスデザイナー」が挙げられている点です。

これらの職種は、プログラミング言語を使用するコーティングスキルが必須ではない職種です。

次のグラフをみると、さらに企業が求めているDX人材の濃淡がはっきりします。

出典:DX白書2021

日米企業ともに、育成したいのは人材として最も割合が高いのが「プロダクトマネージャー」という結果になりました。

プロダクトマネージャーとは?

プロダクトマネージャーという言葉をご存知でしょうか。

ソフトウェア会社のアトラシアンは、プロジェクトマネージャーを以下のように定義しています。

プロダクト マネージャーとは、顧客のニーズ、製品や機能が満たす大きなビジネス目標を特定し、製品の成功とは何かを明確にし、そのビジョンを実現するためにチームをまとめる人のことです。

出典:ATLASSIAN Agile Coach

そして、プロダクトマネージャーの主なタスクとして、次の点を挙げています。

・ユーザーのニーズを理解し、説明する。

・市場を監視して、競合相手の分析を行う。

・製品のビジョンを定義する。

・製品のビジョンに合わせて関係者を調整する

・製品の特長と機能に優先順位を付ける。

・大規模なチーム間で共通の理念を築き、独立した意思決定を促す。

出典:ATLASSIAN Agile Coach

ITの業界は、技術に注目が集まりがちなので、個人の技量が物を言う世界だと思われがちです。

しかし、DX白書にも分類がされているように、一口にIT人材といっても、様々な業種があります。

それぞれの業種の人が、それぞれの仕事をすることで、DXが実現されるということです。

ITを活用することは、個人競技ではなく、団体競技。そこには、チームプレーが不可欠です。

チームプレーが求められるからこそ、全体を統括するマネージャーの必要性も出てきます。

プロダクトマネージャーは、企業が達成したい目標にむかって、エンジニアやプログラマー、デザイナーなど高い技術を持った人たちが協働できる環境を整える調整役を務めます。

この役割も、コーディングなど具体的なスキルを持っている人材と同じように重要な人材です。

むしろ、DX白書から分かるのは、こうしたプロダクトマネージャーやビジネスデザイナーといった「ITリテラシー」と「ビジネス力」を備えた人材を企業が強く求めているということです。

ITを学び直す社会人の進路図

ここまで、企業がプロダクトマネージャーやビジネスデザイナーといったDX人材を強く求めていることを解説してきました。

私は社会人になってからITを学び直す人は、プロダクトマネージャーやビジネスデザイナーの職種を目指すべきだと考えています。

理由は大きく2つあります。一つはポジティブな理由、もう一つはネガティブな理由です。

  • 社会人になって培った経験知を、継続して生かすことができる
  • 社会人になってから高いコーディングスキルを身に着けるのは難しい

1つ目の理由は、プロダクトマネージャーとビジネスデザイナーという職種では、社会人の方が、それまで培ってきたIT以外の専門知識を継続して生かすことができる点です。

プロダクトマネージャーとビジネスデザイナーに求められるのは、ITリテラシーとビジネス力でした。

ビジネス力というは、それぞれの業界における専門知識も含まれています。逆に、そうした専門知識がないと、効果的にITを活用する方法を生み出していくことはできません。

すでに、それぞれの業界で一定のキャリアのある方は、その経験知にITリテラシーをプラスしていく。

そして、最終的にプロダクトマネージャーやビジネスデザイナーといった役割を目指す。

こうした進路をとる方が、これまでの専門知識を生かしつつ、キャリアアップを図ることができるのではないかと思います。

2つ目の理由は、社会人になってから、プログラミング言語を使った高いコーディングスキルを身に着けることは難しいからです。

これは、私の実体験から申し上げていますが、実務に使えるコーティングスキルは一朝一夕には身に付きません。

実務に使えるようなコーディングスキルというのは、極めて専門的なスキルです。

野球選手やピアニストのように、長い訓練期間が必要になります。

こうした専門的なスキルを社会人になってから、しかも、素人が学び直すというのは、非常に大変な作業です。

もちろん、社会人になってから、プログラミング言語を学んで、エンジニアやプログラマーとして活躍している方がいるのは承知しています。

しかし、すべての方が、そういった道を歩むことができるわけではない、というのもまた事実です。

一定のキャリアのある社会人の方は、むしろ、これまでの培った専門知識を生かしつつ、ITリテラシーを高めていく。

それが、現実的かつ効果的なキャリアアップにつながると考えています。

もちろん、ITリテラシーを高めるために、基本的なコーディングを経験することは必要だと思います。

まとめ

  • 企業がより求めているのは「プロダクトマネージャー」と「ビジネスデザイナー」
  • 言い換えれば、「ITリテラシー+ビジネスの力」を備えた人材
  • エンジニアやプログラマーのような技術力はなくても、ITを生かす人材にはなれる
  • 社会人になってからITを学び直す人は、「プロダクトマネージャー」や「ビジネスデザイナー」を目指そう