キャリア

菅政権発足で「デジタル庁創設」背景に10万円オンライン申請の課題

2020年9月15日

安倍総理の後任を決める自民党総裁選が行われ、菅義偉氏を総理大臣とする新たな内閣が発足することになりました。

今回の総裁選で菅氏が訴えた政策の1つが「デジタル庁」の新設です。いくつのも省庁にまたがって行われていたデジタル関連の政策を一元化するとしています。

菅氏がデジタル庁新設を掲げた背景には、新型コロナウイルスの緊急支援策として実施された10万円給付をめぐって浮き彫りになった行政のデジタル化の遅れがあります。

菅氏が創設目指す「デジタル庁」とは

菅氏:「新型コロナウイルス禍で浮き上がったのはデジタル化の必要性であります。行政のデジタル化についてはマイナンバーカードが不可欠にもかかわらず、普及が進んでおりませんでした。だからこそ、できることから前倒しに措置をします。複数の役所に分かれている政策を強力に進める体制としてデジタル庁を新設を致したい」

2020年9月8日に行われた自民党総裁選の所見発表演説会。

当初から大本命といわれてきた菅氏は、自らが総理大臣になった後の政策の1つとして「デジタル庁」の新設を掲げました。

その理由として指摘したのが、新型コロナウイルス対策をめぐって明らかになった行政のデジタル化の遅れです。

10万円給付で相次いだ“オンライン申請中止”

緊急経済対策として、政府が行った国民に一律10万円を給付する「特別定額給付金」事業。2020年5月から申請が始まりました。

申請方法は2つ。自治体が配布する申請書を郵送するか、オンラインで申請するかです。

オンライン申請は、政府が運営する「マイナポータル」というオンラインサービスから行うことができます。

マイナンバーカードを持っている人のみが対象ですが、自治体からの申請書の郵送を待たずに申請を行うことができるので、より早く給付金を受け取ることができるとされました。

しかし、その後は思わぬ事態に。10万円給付事業が始まって1ヵ月には、オンライン申請を中止した自治体が43団体にも上ったのです。

少しでも早く10万円を給付するために用意されたオンライン申請を、自治体はなぜ中止せざるを得なかったのでしょうか。

誤入力や二重申請 確認作業に追われる自治体

最大の理由が、政府が運営するマイナポータルと自治体のシステムとの連携が不十分だったことです。

マイナンバーカードを持っていれば利用できるマイナポータルですが、このサービスではマイナンバーを入力するだけで各自治体に届け出ている名前や住所などを自動的に表示させることはできません。

そのためマイナポータル上で給付金の申請を行うには、本来であれば各自治体が把握しているはずの名前や住所などを改めて入力する必要があります。この申請者の情報がマイナポータルを通じて、実際に給付を行うそれぞれの自治体に通知されます.

ただ、ここで問題なのは「マイナンバーカードを持っている人しか使えない政府のサービス」を経由して知らされた申請者情報は、各自治体にとっては「確認がとれていない不確かな情報」として扱われてしますことです。

今回の給付事業は、世帯主が代表して給付金の申請を行う方式でした。

しかし、世帯主がマイナポータル上で入力した家族構成が本当に正しいのかどうか、自治体はすぐに判断することができません。自治体が管理している住民基本台帳に基づく申請ではないからです。あくまで、自己申告ということです。悪意のある人の申請であれば、給付金を多く得るために家族構成を偽っている可能性もあります。

そのためマイナポータル経由で受け取った申請者情報を鵜呑みにせず、各自治体はそれぞれが整備した住民基本台帳と照らし合わせて確認する手間が発生したのです。

結果的に今回の10万円給付事業では、世帯主がマイナポータル上で申請した内容が間違っているケースが相次ぎました。多かったのが名前や住所の誤入力や、情報を入力する欄を間違えるなどのミスです。

より早く10万円を国民に届けるためのオンライン申請でしたが、マイナポータル上で申請をうけた自治体の作業量をかえって増やすことになりました。その作業があまりに多かったため、オンライン申請の受付を中止して、郵送のみに限る自治体が相次いだのです。

各自治体が配布する申請書であれば、住民基本台帳に基づいて住所や家族構成などの情報があらかじめ印字されています。そのため誤った情報が入力されることはありません。

自治体が申請書を作成して郵送するため、マイナポータルよりも申請受付を始める時期は遅くなります。

しかし、それでも「オンラインではなく郵送で申請を受け付けたほうが給付が早く行える」と判断した自治体が多かったということです。

自治体が保有する個人情報をめぐっては、これまで各自治体と国が同じように情報を共有できるシステムの構築が模索されました。ただ、万が一情報が流出した場合の被害が大きいことから、現状では個人情報をひとつのシステムに集約することは行われていません。

行政が持つ個人情報をデジタル化することのデメリットに配慮した対応ですが、一方で今回のコロナ禍ではそのメリットが改めて認識されました。

総裁選後の行われた就任会見で菅氏は改めてデジタル庁の創設を訴えました。

菅氏:「最終的にはこのマイナンバーカードがあれば役所にわざわざいかなくても24時間365日(行政手続きが)できるような、そうした方向にしたい。法改正にむけてさっそく準備をしていく」

菅新総理がデジタル庁を新設した上で、どのように行政のデジタル化を進める考えなのか。まだ不透明な点が多いですが、今後の動向が注目されます。