近年,頻繁に耳にするようになった「IT人材」という言葉.
最近はついに「IT人材専用住宅ローン」なるものまで登場しました.
IT人材とはいったいどんな人材なのか.なぜいま注目が集まっているのでしょうか.
今注目の「IT人材」とは?
経産省が発表している「IT人材需給に関する調査」という報告書では,IT人材を以下のように定義しています.
(IT人材としては)情報サービス・ソフトウェア企業においてITサービスやソフトウェア等の提供を担う人材に加えて,ITを活用するユーザー企業の情報システム部門の人材,ユーザー企業の情報システム部門以外の事業部門においてITを高度に活用する人材,さらにはITを利用する一般ユーザーなどが存在する
経産省「IT人材需給に関する調査」(2019)
この定義によれば,インターネットを使ったり,ワードで文書を作成したりする人はIT人材ということになります.
ただ,これではあまりに対象とする人材の幅が広くなってしまいます.一般的に多くの人が行っていることなので,取り立てて専門性のあるスキルでもありません.
そこで経済産業省の統計では,IT人材の定義に当てはまる人のうち,職業的にITを生み出したり,利用したりする人を統計の対象としています.
具体的な職業としては,システムコンサルタントやソフトウェア設計者などが該当します.
将来的にIT人材が最大79万人不足!?
経済産業省の別の調査によれば,2015年時点で国内のIT人材の数は約92万人.
一方で,2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると試算されています.
この背景にあるのがIT市場の拡大です.
IT市場の規模は2015年を100とすると,毎年1.5~2.5%ほど拡大していくことが見込まれています.
新型コロナの感染拡大によってテレワークなどが普及したことで,IT市場はさらに大きく成長する可能性があります.
ところが,IT業界に就職する人は2019年をピークに減少しています.
こうした傾向が続くことで2030年には最大で79万人のIT人材が足りなくなるというのです.
つまり,IT人材は今後,長期にわたって引く手あまたの状態ということになります.
アメリカは日本の2倍! 給与水準低い日本
ただ,こうした需要の高まりにIT人材の給与水準は追いついていないのが現状です.
日本のIT人材の平均年収は598万円.全産業の労働者の平均年収355万円と比較すると,約1.7倍.業種の中では高い水準にあるといえます.
しかし,アメリカのIT人材の平均年収は1157万円と,日本の2倍です.全産業の平均年収と比べても,2.7倍の水準になっています.
中国にいたっては,IT人材がほかの産業の労働者よりも7.7倍もの収入を得ています.
アメリカや中国に比べて日本ではIT人材と他の産業の労働者で給与水準の差が小さくなっています.
これは日本におけるIT人材の評価の低さや年功序列型の賃金体系が影響していると考えられます.
もちろん,IT市場の規模や雇用環境に違いがあるため,日本と他国の状況を同じ基準で比較することはできません.
ただ,日本だけでなく世界的にIT人材の需要が高まっていることを考えれば,日本のIT人材の給与がさらに上がっていくことは十分に考えられます.
IT人材は銀行も安心の融資先?
こうしたIT人材の給与上昇を見越してか,「IT人材専用」の住宅ローンも登場しました.
静岡銀行が今年8月に始めたもので,最大35年・最大1億円の融資を受けることができます.
住宅ローン審査では,会社の勤続年数や会社の規模が重要な要素になります.
しかし,IT業界では転職を繰り返す人や個人事業主も多いため,これまでIT人材は住宅ローン審査に通りにくい現状があったといいます.
この住宅ローンでは,ITに関連する職種であることや,IT関連の資格を持っていることを証明できれば申し込むことができます.
銀行は「IT人材であれば融資先として安全」と考えているということです.
かつては「会社員であれば安泰」と言われましたが,今後は「IT人材であれば安泰」という評価も生まれてくるかもしれません.
用語解説
注目のIT人材とは 大幅不足で年収アップ?専用住宅ローンも登場
近年,頻繁に耳にするようになった「IT人材」という言葉.
最近はついに「IT人材専用住宅ローン」なるものまで登場しました.
IT人材とはいったいどんな人材なのか.なぜいま注目が集まっているのでしょうか.
今注目の「IT人材」とは?
経産省が発表している「IT人材需給に関する調査」という報告書では,IT人材を以下のように定義しています.
この定義によれば,インターネットを使ったり,ワードで文書を作成したりする人はIT人材ということになります.
ただ,これではあまりに対象とする人材の幅が広くなってしまいます.一般的に多くの人が行っていることなので,取り立てて専門性のあるスキルでもありません.
そこで経済産業省の統計では,IT人材の定義に当てはまる人のうち,職業的にITを生み出したり,利用したりする人を統計の対象としています.
具体的な職業としては,システムコンサルタントやソフトウェア設計者などが該当します.
将来的にIT人材が最大79万人不足!?
経済産業省の別の調査によれば,2015年時点で国内のIT人材の数は約92万人.
一方で,2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると試算されています.
この背景にあるのがIT市場の拡大です.
IT市場の規模は2015年を100とすると,毎年1.5~2.5%ほど拡大していくことが見込まれています.
新型コロナの感染拡大によってテレワークなどが普及したことで,IT市場はさらに大きく成長する可能性があります.
ところが,IT業界に就職する人は2019年をピークに減少しています.
こうした傾向が続くことで2030年には最大で79万人のIT人材が足りなくなるというのです.
つまり,IT人材は今後,長期にわたって引く手あまたの状態ということになります.
アメリカは日本の2倍! 給与水準低い日本
ただ,こうした需要の高まりにIT人材の給与水準は追いついていないのが現状です.
日本のIT人材の平均年収は598万円.全産業の労働者の平均年収355万円と比較すると,約1.7倍.業種の中では高い水準にあるといえます.
しかし,アメリカのIT人材の平均年収は1157万円と,日本の2倍です.全産業の平均年収と比べても,2.7倍の水準になっています.
中国にいたっては,IT人材がほかの産業の労働者よりも7.7倍もの収入を得ています.
アメリカや中国に比べて日本ではIT人材と他の産業の労働者で給与水準の差が小さくなっています.
これは日本におけるIT人材の評価の低さや年功序列型の賃金体系が影響していると考えられます.
もちろん,IT市場の規模や雇用環境に違いがあるため,日本と他国の状況を同じ基準で比較することはできません.
ただ,日本だけでなく世界的にIT人材の需要が高まっていることを考えれば,日本のIT人材の給与がさらに上がっていくことは十分に考えられます.
IT人材は銀行も安心の融資先?
こうしたIT人材の給与上昇を見越してか,「IT人材専用」の住宅ローンも登場しました.
静岡銀行が今年8月に始めたもので,最大35年・最大1億円の融資を受けることができます.
住宅ローン審査では,会社の勤続年数や会社の規模が重要な要素になります.
しかし,IT業界では転職を繰り返す人や個人事業主も多いため,これまでIT人材は住宅ローン審査に通りにくい現状があったといいます.
この住宅ローンでは,ITに関連する職種であることや,IT関連の資格を持っていることを証明できれば申し込むことができます.
銀行は「IT人材であれば融資先として安全」と考えているということです.
かつては「会社員であれば安泰」と言われましたが,今後は「IT人材であれば安泰」という評価も生まれてくるかもしれません.