ITパスポート

取得推奨の企業続々 ITパスポートに合格するメリットは?

2020年10月4日

・ITパスポートは取得しても意味がないの?

・ITパスポートは評価される資格なの?

国を挙げてデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれている中で、ITを学ぶ重要性が高まっています。

その第一歩として、ITパスポート試験の受験を考えている方も多いのではないでしょうか。

でもITパスポートをめぐっては、こんな意見も散見されます。

「ITパスポートは使えない」。「合格しても意味がない」。

私はこうした意見は半分正しく、半分間違っていると思っています。

なぜなら、この試験が役に立つかどうかは受験する人の立場によって違うからです。

確かにエンジニアなどすでにITに詳しい方にとっては、ITパスポート試験を受けることはあまり意味がありません。

試験で問われるのはエンジニアにとっては当たり前なことにばかりだからです。

しかし、「ITのことを知りたいけど、いまはよくわからない」、「ITリテラシーを見身につけたい」という人には、ITパスポートはうってつけの試験です。

その名の通り、この試験に合格することでIT世界の入り口に立つことができます

また、ITパスポートはITだけではなくビジネスにも使える知識を学ぶことができるのも大きなメリットです。

この記事ではITパスポートのメリットについて解説します。

ITパスポートとは

ITパスポートとは「情報処理の促進に関する法律」に基づいて経済産業省が認定する国家試験です。IPA=独立行政法人「情報処理推進機構」が実施しています。

IPAはITパスポートの概要を以下のように説明しています。

ITパスポートとは

ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべき、ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験(ITパスポート試験ウェブサイトより)

ITパスポートは運転免許試験のような合格することで特定の行為が可能になる資格試験ではありません。TOEICや英検のように合格することで得られるのは知識の量や質の証明です。

ITパスポートで証明できるのは、主に次のような知識です。

  • ITリテラシー
  • マーケティング・財務・法務などの経営関連知識
  • プロジェクトマネジメント関連

試験の概要

場所:全国47都道府県で実施

時期:毎月複数回実施(会場によっては1日3回実施するところも)

費用:5700円(消費税込み)

試験時間:2時間

試験方式:出題数100問 CBT方式(選択式)

ITパスポート試験は、毎月複数回、全国各地の会場で実施されています。

各都道府県における開催状況は、以下のページで確認できます。
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/examhall/examhall_info.html

テストはすべてCBT方式で行われます。パソコンで選択式の問題を解く方式です。

合格すると経済産業大臣名で合格証書が交付されます。

ITパスポートは2009年から始まり、年々応募者が増加。当初は年間7万人ほどだった応募者は2020年に年間14万人を突破し倍増しています。

社会人の受験が「6割」の理由

2020年の応募者のうちの66%が社会人で、そのうちIT企業以外の人が67%を占めます。

つまり、ITパスポートの応募者の多くがIT企業のエンジニアではなく、一般の企業に勤めるビジネスマンなのです。

実際に多くの企業が社員教育でITパスポートを活用しています。

Iパスを活用する主な企業

  • サイバーエージェント…全新入社員が受験
  • NTTドコモ…全社員対象の資格取得奨励制度に含む。合格者には一時金支給
  • カブドットコム証券…全社員は試験の合格必須。受験料を会社負担
  • 富士ゼロックス…営業職の新人全員の合格を目標に
  • JR東日本…内定者の取得を推奨
  • 日立製作所…営業部門の新人に受験を必須化
  • 富士通…営業職新人は1年目の終わりに全員合格

化粧品や健康食品の大手「ファンケル」は、ITパスポート導入の背景について次のようにコメントしています。

Withコロナの時代となり、一段とデジタル化が加速している中、様々な社会の変化に即応していくには、全従業員が、土台として基礎的なITリテラシーを身に付けておくことが必要不可欠である。ITパスポート試験(iパス)は、基礎的なITリテラシーの全体要素を総合的に学ぶことができる最適なツールと位置付けている。

ITパスポート試験ウェブサイトより

ファンケルでは模範として、まず社長をはじめ役員や組織長が実際にITパスポートを受験したといいます。

なぜ、ITパスポートを活用する企業が増えているのか。その理由は大きく3つあります。

理由①ITリテラシーを証明できる

現代社会のあらゆるところにITが浸透し、ITに関わらない人はいないといっても過言ではありません。企業でも多くの業務にITが活用されています。

こうした中で重要になるのが「ITリテラシー」です。私が考える定義は以下の通りです。

ITリテラシーとは?

IT(情報活用技術)に関する知識、またはITを使いこなす能力

ITリテラシーはWordやExcelの使い方を覚えることだけではありません。

WordやExcelはITによって実現されるソフトウェアの中の一つに過ぎません。

「IT=ソフトウェアの使い方」なのではなく、ITとは情報を活用するために人間が行っている営み全般を指します。

ITパスポートにはWordやExcelのような個別のソフトウェアの操作方法を問う問題はありません。

ITパスポートで問われるのは、そうしたソフトウェアがどのように生み出されているか。ソフトウェアが動く土台であるハードウェアやネットワークの仕組みなど、より基礎的な知識です。

ITパスポートの学習を始めると、こうした基礎的な仕組みの上にWordやExcelといった個別のソフトウェアがあることが分かります。

基礎的な知識であるがゆえに、ITパスポートに合格しても実践的なスキルは身に付きません。

その代わりにITをめぐる動向の全体像をつかめるようになります。そもそも、情報を有効活用するためにどのような選択肢があるのか。より、広い視点を持つことができます。

ITリテラシーを見につけることで、適切なソフトウェアをより有効に活用できます。

理由②経営知識を学べる

さらにビジネスマンにとって有益なのは、ITパスポートではいわゆる経営全般の知識を学ぶことができる点です。

財務諸表の見方や労務関係の法律など、知っておけばその後もずっと使い続けられる知識です。ITパスポートではこうしたビジネス知識がコンパクトにまとまって出題されます。

ところで、ITパスポートではなぜ経営全般に関する知識も問われるのか。

私はその理由は、ITに高い「汎用性」があるからだと考えています。汎用性とは、幅広く色々なことに利用できる性質のことです。

例えば、汎用性の高い技術に「電気を利用する技術」が挙げられます。

電気を光に変えて部屋を明るくしたり、電気を使って車を動かしたり、私たちは様々なものに電気を利用しています.

電気には無数の利用方法があるのです.

汎用性の高い技術やモノは、その汎用性の高さから、どのように使うかが非常に重要になります。

ITパスポートは、ITの開発にかかわる人だけでなく、ITを仕事に生かす人も対象にした試験です。

仕事に生かすとは、主にITを会社という組織内で活用することです。

そのためにはITだけでなく会社の環境についても知識がなければ、社内でITを生かすことはできません。

であるからこそ、ITパスポートではビジネスに関する知識が求められているのです。

ITパスポートに合格することで、ITとビジネスの知識をバランスよく習得することができます。

これがこの試験の大きなメリットの1つと言えます。

具体的に仕事に生かせる知識は以下の記事でも解説しています。

理由③AIを知ることができる

ITパスポートは多くの企業で活用が進んでいるAIについても学ぶことができます。

AIは自社が開発するだけでなく、AIをサービスとして利用する選択肢もあります。AIはどのような仕組みで、どのような利点があるのか。

ITパスポートを学ぶことで、AIを活用する方法を見につけることができます。

新人社員に取得を促す企業が多いのは、ITパスポート合格によって、今後の成長の土台となるITやAI、それに経営に関する基礎的な知識が身に付くからだと考えられます。

具体的な出題例


問題は「テクノロジ系」、「マネジメント系」、「ストラテジ系」の3分野から出題されます。

テクノロジ系は、「IT技術の基礎理論」や「ハード・ソフトウェア」、「アルゴリズム」や「プログラミング」などの知識が問われます。つまり,IT技術そのものに関する知識です。

例えば、こんな問題が出題されます。

問71 複数のIoTデバイスとそれらを管理するIoTサーバで構成されるIoTシステムにおける、エッジコンピューティングに関する記述として、適切なものはどれか。

ア IoTサーバ上のデータベースの複製を別のサーバにも置き、両者を常に同期させて運用する。

イ IoTデバイス群の近くにコンピュータを配置して、IoTサーバの負荷低減とIoTシステムのリアルタイム性向上に有効な処理を行わせる。

ウ IoTデバイスとIoTサーバ間の通信負荷の状況に応じて、ネットワークの構築を自動的に最適化する。

エ IoTデバイスを少ない電力で稼働させて、一般的な電池で長時間の連続運用を行う。

2019年度 秋期分

答えは、「イ」です。

マネジメント系で問われるのは「システム開発技術」、「ソフトウェア開発管理技術」、「プロジェクトマネジメント」などの分野に関する知識です。つまり、ITを開発したり、ITを使って人を管理するための知識です.

実際に出題された問題がこちら。

問46 システム開発後にプログラムの修正や変更を行うことを何というか。

ア システム化の企画

イ システム運用

ウ ソフトウェア保守

エ 要件定義

2019年度 秋期分

正解は「ウ」です。

このようにテクノロジ系・マネジメント系の問題はともにITに関する知識を問われます.

ITに関する知識だけでなくビジネスに関する知識が問われるのが「ストラテジ系」です。

この分野では、「企業活動」、「法務」、「経営戦略マネジメント」など企業経営に関する問題が出題されます.

例えば、こちら。

問7 事業環境の分析などに用いられる3C分析の説明として、適切なものはどれか。

ア 顧客、競合、自社の三つの観点から分析する。

イ 最新購買日、購買頻度、購買金額の三つの観点から分析する。

ウ 時代、年齢、世代の三つの要因に分解して分析する。

エ 総売上高の高い順に三つのグループに分類して分析する。

2019年度 秋期分

正解は、「ア」です。

3C分析はマーケティング戦略を決めるときなどに活用されるフレームワークのことです。

ビジネスを顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という3つの異なる立場から分析し課題を探る手法です.

まとめ

  • ITパスポートは年間14万人が応募する国家試験
  • ITだけではなくビジネスの知識も問われる
  • ITを生かすためにはビジネスの知識が必要


ITパスポートは社会人が独学でも合格することができます。

おすすめの参考書や通信講座はこちらの記事で紹介しています。