この記事でわかること
- ITパスポートの概要
- ITパスポートのメリット
- 企業が取得を推奨する理由
多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれている中で、ITを学ぶ重要性が高まっています。
その第一歩として、ITパスポート試験の受験を考えている方も多いのではないでしょうか。
でもITパスポートをめぐっては、こんな意見も散見されます。
「ITパスポートは取得しても意味がない、役に立たない」

私はこうした意見は半分正しく半分間違っていると思います。
なぜなら、この試験が役に立つかどうかは受験する人の立場によって違うからです。
以下のような方は、ITパスポート試験が役に立たないと感じることが多いのかもしれません。
- ITエンジニア・プログラマーなど、すでにITに詳しい方
- 簿記などの経営知識をすでにお持ちの方
試験で問われるのITや経営に関する知識は基礎的なことが多いからです。
しかし、次の項目に当てはまる方にとっては、ITパスポートはうってつけの試験です。
- ITに詳しくなりたい人
- ITリテラシーを身につけたい人
- 経営知識を身につけたい人
その名の通り、この試験に合格することで、ITや経営の世界の入り口に立つことができます。

私もITパスポート試験に合格して、ITや経営に関する知識を幅広く習得することができ、仕事の視野が広がりました。実際、多くの企業が取得を推奨していて、合格して損はない試験です。
この記事ではITパスポートの概要とメリットを詳しく解説します。
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この記事を書いた人

よーへい
- 30歳からITの学び直しを始めた男性会社員
- ITパスポート試験(2018年12月)合格
基本情報技術者試験(2019年4月)合格 - 情報学修士号取得(2021年3月)
- よちよち歩きで学んだITのあれこれを当ブログで発信中
ITパスポートとは?
試験の目的
ITパスポートとは「情報処理の促進に関する法律」に基づいて経済産業省が認定する国家試験です。
2009年から独立行政法人「情報処理推進機構」(IPA)が実施。通称、「iパス」と呼ばれています。
ITパスポートとは
ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべき、ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験(引用:ITパスポート試験公式サイト)

ざっくりいうと、ITに詳しくない人が、ITの基礎知識を習得するための試験です
ITパスポートで証明できるのは、主に次のような知識です。
- セキュリティ
- ネットワーク
- マーケティング
- 財務
- 法務
- プロジェクトマネジメント
受験方法
ITパスポート試験は、毎月複数回、全国各地の会場で実施されています。
各都道府県における開催状況は、以下のページで確認できます。
≫【ITパスポート試験】試験開催状況一覧
試験の概要
- 場所:全国47都道府県で実施
- 時期:毎月複数回実施(会場によっては1日3回実施するところも)
- 費用:7500円(消費税込み)
- 試験時間:120分
- 試験方式:出題数100問 CBT方式(選択式)
テストはすべてCBT方式(パソコンで選択式の問題を解く方式)で行われ、合格すると経済産業大臣名で合格証書が交付されます。
合格率
ITパスポートは2009年から始まり、年々応募者が増加。
当初は年間7万人ほどだった応募者は2022年度には年間25万人を突破しています。
≫令和4年度「iパス(ITパスポート試験)」の年間応募者数等について
受験者と合格率
- 応募者数:25万3159人
- 受験者数:23万1526人
- 合格率(合格者):52%(11万9495人)
iパスは資格?試験?
少し紛らわしいですが、ITパスポートは「資格」ではなく「試験」という位置づけになっています。
合格しないと行うことができない業務はないからです。
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ITパスポートは国家資格?国家試験?何が違うの?
ITパスポートは運転免許試験のような合格することで特定の行為が可能になる資格試験ではありません。TOEICや英検のように合格することで得られるのは知識の量や質の証明です。
ですが、国が法律に基づいて技能を認定してくれる点では同じなので、実質的に「資格」も「試験」も大きな差はありません。

ITパスポートの参考書やスクールの中には、「資格」と表記しているところもあります。
社会人の応募が「8割」
2022年の応募者約25万人のうち、社会人の応募者は78%(19万6209人)を占めます。
応募するのも、IT関連の職種や企業の社会人ばかりではありません。
社会人応募者の業種
- 金融・保険業、不動産業:42%
- 情報処理・提供サービス業:9%
- 製造業:9%
- サービス業:7%
- ソフトウェア業:6%
- その他:27%
ITパスポートの応募者の多くがIT企業のエンジニアではなく、一般の企業に勤めるビジネスマンなのです。
実際に多くの企業が社員教育でITパスポートを活用しています。
iパスを活用する主な企業
- ニトリ:社員全員のiパス合格を目指す
- サイバーエージェント…全新入社員が受験
- NTTドコモ…全社員対象の資格取得奨励制度に含む。合格者には一時金支給
- カブドットコム証券…全社員は試験の合格必須。受験料を会社負担
- 富士ゼロックス…営業職の新人全員の合格を目標に
- JR東日本…内定者の取得を推奨
- 日立製作所…営業部門の新人に受験を必須化
- 富士通…営業職新人は1年目の終わりに全員合格
(参考:ITパスポート試験「企業の声」)
化粧品や健康食品の大手「ファンケル」は、ITパスポート導入の背景について次のようにコメントしています。
Withコロナの時代となり、一段とデジタル化が加速している中、様々な社会の変化に即応していくには、全従業員が、土台として基礎的なITリテラシーを身に付けておくことが必要不可欠である。ITパスポート試験(iパス)は、基礎的なITリテラシーの全体要素を総合的に学ぶことができる最適なツールと位置付けている。
ITパスポート試験ウェブサイトより
ファンケルでは模範として、まず社長をはじめ役員や組織長が実際にITパスポートを受験したといいます。
ITパスポートのメリットは?
ITパスポートの特徴をまとめると、以下の通りです。
- 応募者が急増中(年間25万人超)
- 従業員に取得を推奨する企業も増加中
なぜ、ITパスポートの需要が高まっているのか。
ここからはその理由を解説していきます。
メリット①ITリテラシーの証明
まず、挙げられるがITパスポートを取得することで、ITリテラシーを持っていることを証明できる点です。
現代社会のあらゆるところにITが浸透し、ITに関わらない人はいないといっても過言ではありません。企業でも多くの業務にITが活用されています。
こうした中で重要になるのが「ITリテラシー」です。

ITリテラシーはわかるようでわからないような抽象的な言葉ですが、私が考える定義は以下の通りです。
ITリテラシーとは?
IT(情報活用技術)に関する知識、またはITを使いこなす能力
ITリテラシーはWordやExcelの使い方を覚えることだけではありません。
WordやExcelはITによって実現されるソフトウェアの中の一つに過ぎません。

「IT=ソフトウェアの使い方」なのではなく、ITとは情報を活用するために人間が行っている営み全般を指します。
ITパスポートにはWordやExcelのような個別のソフトウェアの操作方法を問う問題はありません。
ITパスポートで問われるのは、そうしたソフトウェアがどのように生み出されているか。ソフトウェアが動く土台であるハードウェアやネットワークの仕組みなど、より基礎的な知識です。
ITパスポートの学習を始めると、こうした基礎的な仕組みの上にWordやExcelといった個別のソフトウェアがあることが分かります。
基礎的な知識であるがゆえに、ITパスポートに合格しても実践的なスキルは身に付きません。
その代わりにITをめぐる動向の全体像をつかめるようになります。そもそも、情報を有効活用するためにどのような選択肢があるのか。より、広い視点を持つことができます。
ITリテラシーを見につけることで、適切なソフトウェアをより有効に活用できます。
理由②経営知識を学べる
さらにビジネスマンにとって有益なのは、ITパスポートではいわゆる経営全般の知識を学ぶことができる点です。
財務諸表の見方や労務関係の法律など、知っておけばその後もずっと使い続けられる知識です。
ITパスポートではこうしたビジネス知識がコンパクトにまとまって出題されます。
ところで、ITパスポートではなぜ経営全般に関する知識も問われるのか。
私はその理由は、ITに高い「汎用性」があるからだと考えています。汎用性とは、幅広く色々なことに利用できる性質のことです。
例えば、汎用性の高い技術に「電気を利用する技術」が挙げられます。
電気を光に変えて部屋を明るくしたり、電気を使って車を動かしたり、私たちは様々なものに電気を利用しています.
電気には無数の利用方法があるのです.
汎用性の高い技術やモノは、その汎用性の高さから、どのように使うかが非常に重要になります。
ITパスポートは、ITの開発にかかわる人だけでなく、ITを仕事に生かす人も対象にした試験です。
仕事に生かすとは、主にITを会社という組織内で活用することです。
そのためにはITだけでなく会社の環境についても知識がなければ、社内でITを生かすことはできません。
であるからこそ、ITパスポートではビジネスに関する知識が求められているのです。
ITパスポートに合格することで、ITとビジネスの知識をバランスよく習得することができます。
これがこの試験の大きなメリットの1つと言えます。
具体的に仕事に生かせる知識は以下の記事でも解説しています。
理由③AIを知ることができる
ITパスポートは多くの企業で活用が進んでいるAIについても学ぶことができます。
AIは自社が開発するだけでなく、AIをサービスとして利用する選択肢もあります。AIはどのような仕組みで、どのような利点があるのか。
ITパスポートを学ぶことで、AIを活用する方法を見につけることができます。
新人社員に取得を促す企業が多いのは、ITパスポート合格によって、今後の成長の土台となるITやAI、それに経営に関する基礎的な知識が身に付くからだと考えられます。
具体的な出題例
問題は「テクノロジ系」、「マネジメント系」、「ストラテジ系」の3分野から出題されます。
テクノロジ系は、「IT技術の基礎理論」や「ハード・ソフトウェア」、「アルゴリズム」や「プログラミング」などの知識が問われます。つまり,IT技術そのものに関する知識です。
例えば、こんな問題が出題されます。
問71 複数のIoTデバイスとそれらを管理するIoTサーバで構成されるIoTシステムにおける、エッジコンピューティングに関する記述として、適切なものはどれか。
ア IoTサーバ上のデータベースの複製を別のサーバにも置き、両者を常に同期させて運用する。
イ IoTデバイス群の近くにコンピュータを配置して、IoTサーバの負荷低減とIoTシステムのリアルタイム性向上に有効な処理を行わせる。
ウ IoTデバイスとIoTサーバ間の通信負荷の状況に応じて、ネットワークの構築を自動的に最適化する。
エ IoTデバイスを少ない電力で稼働させて、一般的な電池で長時間の連続運用を行う。
2019年度 秋期分
答えは、「イ」です。
マネジメント系で問われるのは「システム開発技術」、「ソフトウェア開発管理技術」、「プロジェクトマネジメント」などの分野に関する知識です。つまり、ITを開発したり、ITを使って人を管理するための知識です.
実際に出題された問題がこちら。
問46 システム開発後にプログラムの修正や変更を行うことを何というか。
ア システム化の企画
イ システム運用
ウ ソフトウェア保守
エ 要件定義
2019年度 秋期分
正解は「ウ」です。
このようにテクノロジ系・マネジメント系の問題はともにITに関する知識を問われます.
ITに関する知識だけでなくビジネスに関する知識が問われるのが「ストラテジ系」です。
この分野では、「企業活動」、「法務」、「経営戦略マネジメント」など企業経営に関する問題が出題されます.
例えば、こちら。
問7 事業環境の分析などに用いられる3C分析の説明として、適切なものはどれか。
ア 顧客、競合、自社の三つの観点から分析する。
イ 最新購買日、購買頻度、購買金額の三つの観点から分析する。
ウ 時代、年齢、世代の三つの要因に分解して分析する。
エ 総売上高の高い順に三つのグループに分類して分析する。
2019年度 秋期分
正解は、「ア」です。
3C分析はマーケティング戦略を決めるときなどに活用されるフレームワークのことです。
ビジネスを顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という3つの異なる立場から分析し課題を探る手法です.
まとめ
- ITパスポートは年間14万人が応募する国家試験
- ITだけではなくビジネスの知識も問われる
- ITを生かすためにはビジネスの知識が必要
ITパスポートは社会人が独学でも合格することができます。
おすすめの参考書や通信講座はこちらの記事で紹介しています。