ITパスポート

何が、なぜ変わった?ITパスポート試験でシラバス6.0発表 

2021年10月29日

2021年10月8日、ITパスポート試験の最新シラバス6.0が発表されました。

現在のシラバス5.0も2020年9月に発表され、試験への適用は今年4月から始まったばかり。

1年足らずで新しいシラバスが発表されることになりました。

ITを取り巻く環境は変化が激しいとはいえ、この短期間で何を変えることになったのでしょうか。

この記事ではITパスポートのシラバス6.0導入の背景を詳しく解説します。

最新シラバス6.0の変更点

ITパスポート試験のシラバス6.0は、2022年4月の試験から適用されます。

ITパスポート試験を実施する情報処理推進機構が、今回の改訂で新たに追加した出題項目は以下の通りです。

追加項目

情報デザイン、情報メディア、データ利活用、プログラミング的思考力、情報倫理

情報デザインは「目的や受け手の状況に応じて正確に情報を伝えたり、操作性を高めたりするための考え方や手法を理解する」と説明されています。

プログラミング的思考力については、アルゴリズムとプログラミングの違い、各プログラミング言語の特徴を理解することなどが想定されています。

いずれも、いわゆるIT(デジタル)リテラシーに関する項目で、1年前の2020年9月に発表されたシラバス5.0に続いて拡充された形です。

今回なぜ、これらの項目が追加されることになったのか。

きっかけになったのが2021年6月に国の統合イノベーション戦略推進会議が発表した「AI戦略2021」における提言です。

全国民にITリテラシー教育を

「AI戦略2021」はAIの活用が進む社会に対応していくため、国の今後の指針がまとめられたものです。まず取り組むべき課題として、教育改革が挙げられていて、次のような提言が行われています。

AIを作り、活かし、新たな社会(「多様性を内包した持続可能な社会」)の在り方や、新しい社会にふさわしい製品・サービスをデザインし、そして、新たな価値を生み出すことができる、そのような人材がますます求められている。(中略)
とりわけ、「数理・データサイエンス・AI」に関する知識・技能と、人文社会芸術系の教養をもとに、新しい社会の在り方や製品・サービスをデザインする能力が重要

AI戦略2021 Ⅱ‐1 教育改革より ※太字筆者

簡単に言えば、今後の新しいAI社会に向けて、国民一丸となってIT(デジタル)リテラシーを学んでいこうということです。

そして、こうした方針のもと、次のような目標を掲げています。

AI戦略2021

全ての高等学校卒業生(約100万人卒/年)が、データサイエンス・AIの基礎となる理数素養や基本的情報知識を習得。

文理を問わず、全ての大学・高専生(約50万人卒/年)が、課程にて初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得

この目標が実現されれば、国内で育つすべての子どもたちは「数理・データサイエンス・AI」の基礎的な知識を習得することになります。

そして、ここで掲げたITリテラシー教育を高校や大学で取り入れていくために期待されているのが、ITパスポート試験の活用です。

例えば、ITリテラシーの学習の成果として、 大学入試や就職時のエントリーシートに ITパスポート試験合格の記載を促進するなどとしています。

ITパスポート試験をITリテラシー習得の証明として、より活用していくことを国が進めているのです。

学校教育とiパスに学習内容のずれ

ただ、教育現場でITパスポートを導入するにあたっては課題もありました。

先行して見直しが進められていた高校や大学におけるITリテラシー教育に関する学習内容と、ITパスポートのシラバスの内容にずれがあったのです。

例えば、高校では2022年度から「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」の科目が新設され、情報Ⅰはすべての生徒が必ず履修することになっています。

文部科学省は学習指導要領の中で、情報Ⅰの目標を以下のように説明しています。

情報に関する科学的な見方・考え方を働かせ,情報技術を活用して問題の発見・解決を行う学習活動
を通して,問題の発見・解決に向けて情報と情報技術を適切かつ効果的に活用し,情報社会に主体的に
参画するための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

高等学校学習指導要領(2018年告示)

情報Ⅰで学ぶ項目は、大まかにまとめると以下の通りです。

情報Ⅰで学ぶこと

情報社会の問題解決、コミュニケーションと情報デザイン、コンピュータとプログラミング、情報通信ネットワークとデータの活用

情報デザインやデータの活用など、高校でもより実践的なITリテラシー教育の実施が求められています。

ただ、これらの学習内容はITパスポート試験のシラバス5.には含まられていないものもありました。

これでは高校で学ぶITリテラシー教育の証明のために、ITパスポートを活用することができません。

そこで、今回発表された最新シラバス6.0では「情報Ⅰ」の範囲が反映されることになったのです。

一方、大学においても、ITリテラシー教育に関する改革が進んでいます。

「文理を問わず、全ての大学・高専生(約50 万人卒/年)が、課程にて初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得」することが国の目標で掲げられています。

大学で学ぶ内容については、すでにITパスポートのシラバスに反映されていて、それが1年前の2020年9月に発表されたのシラバス5.0でした。

相次いだシラバス5.0と6.0の発表は、国が行うITリテラシー教育改革に対応したものだと考えることができます。