用語解説

コンピュータとは…かつては「人間の職業」 現代を支える計算のチカラ 

こんにちは。よちよちデジタルです。

今回解説するテーマは「コンピュータ」です。

いまや私たちの生活になくてはならない「コンピュータ」。

でも「コンピュータってなんなのか?」と聞かれたら、どう説明するでしょうか。

コンピュータを使って、私たちは様々なことができます。

文書を作ったり、画像を編集したり。ゲームや電話もすることができます。

実にたくさんのことができるからこそ、「コンピュータは〇〇をする機械」とは簡単に言いにくいのです。

でも、あえてまとめるとすれば「コンピュータは計算をする機械」です。

辞書で「コンピュータ」を調べると「電子計算機」と出てきます。

「コンピュータが計算機?電卓ってこと?」

辞書の説明を聞くと、こんな疑問も湧いてきます。

もちろん、コンピュータは電卓のことではありません。

「コンピュータは計算をする機械」。

文書を作ったり、画像を編集したりできるコンピュータの機能も、実は「計算」によって実現されているのです。

この記事では「計算」が、コンピュータの中でどのように活用され、私たちとって便利な機能が実現しているのか。その基礎を解説します。

コンピュータとは、もともと「人間の職業」

まず、「コンピュータ」という言葉の意味について、歴史をさかのぼってみましょう。

皆さんは「コンピュータ」と聞けば、何を思い浮かべるでしょうか。

会社や自宅にあるパソコンやスマホをイメージする方が多いかと思います。

でも、実は少し前までコンピュータは別の意味で使われていました。

かつて、コンピュータは「計算をする人間」を指していました。職業の名前だったのです。

Wikipedia「計算手」より引用

この写真は1940年代にアメリカ航空宇宙局「NASA」の前身となる組織で働いていたコンピュータ(計算手)と呼ばれた女性たちです。

このオフィスでコンピュータ(計算手)は飛行記録に関する計算をしていたといいます。

「ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち」では、アメリカ初の人工衛星の打ち上げなどに大きな貢献をした女性たちの姿が描かれています。

「コンピューター」という言葉は17世紀からずっと「計算する人」の意味で使われてきたが、19世紀の終わり頃には早くも機械の意味でも使われている。依然として人間に対して使われることが多かったものの、1940年代には「コンピューター」が電子計算機を意味する言葉として使われることも一般的になりつつあった。

ナタリア・ホルト著 秋山文野訳 「ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち」p129より引用

英語のcomputeは「計算する」という意味。

当時、計算ができるのは人間だけだったため、computerは「計算する人間」を指した言葉でした。

ナレーションを読むのはナレーター。コメントをするのはコメンテーターと呼ぶのと同じです。

電子計算機の登場 計算の担い手が機械に

様々な場面で活躍をしていた人間のコンピュータ。その状況を一変させたのが、電子計算機の登場です。

「ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち」でも、コンピュータ(計算手)と呼ばれていた女性たちが担っていた仕事が電子計算機に置き換わっていく様子が描かれています。

電子計算機は人間を超える速度と正確さで計算を行うことが可能です。

やがて、コンピュータといえば人間ではなく電子計算機を指すようになり、計算手という職業はなくなってしまいました。

なぜ「計算」が「パソコン」と関係あるの?

ここまでコンピュータという言葉の歴史について振り返ってきました。

ところで、普段皆さんはパソコンでどんなことをするでしょうか?

メールを送ったり、動画を見たり。お気に入りのネットショップで買い物をする人もいるかと思います。

現在、私たちはパソコンを利用することで非常に多くのことを行うすることができます。

ただ、パソコンの正式名称はパーソナルコンピュータ。コンピュータは電子計算機。計算する機械です。

よく考えてみると、「メールを送ったり動画を見たりする機能」と「計算すること」が、なぜ関係があるのか疑問に思われないでしょうか。

パソコンやスマホも、人間があれこれ計算をすることなく簡単に使うことができます。

この疑問を解決するには少し難しくなりますが、論理演算」「コンピュータの出力装置」に目を向ける必要があります。

計算は普段は物事の数を数えるために行う行為ですが、実は他にも違う計算があります。

それが論理演算です。論理演算は数を数えるのではなく、言ってみれば物事の状態を計算します。

この論理演算による計算を、コンピュータの出力装置で読み解く仕組みを発明したことで、現代のパソコンは様々なことに活用できる非常に便利な道具になったのです。

計算ルールの種類 コンピュータで行うのは「論理演算」

四則演算とは

ここからは計算という行為について、より掘り下げて考えてみます。

計算とは以下のように定義することができます。

計算とは

複数の数字を一定の計算のルールに基づいて処理して、目的の数字を得ること

例えば、5に3を足す計算。

これは、「5」と「3」という数字が与えられたときに、「足す」というルールを適用すると、計算結果は「8」になる、と考えることができます。

また、「8」と「7」という数字が与えられたときに、「引く」というルールを適用すると、計算結果は「1」になります。

以上の計算は私たちが普段、特に意識することなく行っている計算です。

この計算のルールを「四則演算」と呼びます。

適用するルールには足し算・引き算・掛け算・割り算の4つがあります。

計算と言えば、この四則演算が一般的です。

でも、実は「計算」のルールはこの四則演算だけではないのです。

論理演算とは

ここで取り上げる、もう一つの計算のルールが「論理演算」です。

論理演算には以下の4つの計算ルールがあります。

「計算なのにOR?AND?」「これのどこが計算なんだろう」

そう感じる方が多いのではないでしょうか。私も論理演算を初めて知った時に、そう思わざるを得ませんでした。

私たちが慣れている四則演算とはあまりにルールが違うので戸惑ってしまいます。

ただ、これも計算の一つの種類なのです。もう一度、計算の定義を振り返ってみます。

計算とは

複数の数字を一定の計算のルールに基づいて処理して、目的の数字を得ること

論理演算のルールでは、「1」と「1」という数字が与えられたときに、「OR」というルールを適用すると、計算結果は「1」になります。

また、「1」と「0」という数字が与えられたときに、「AND」というルールを適用すると、計算結果は「0」になります。

使う数字の種類や計算ルールは四則演算とは違いますが、論理演算にも数字を処理するための一定のルールがあります。なので、論理演算も計算と呼ぶことができるのです。

論理演算の特長は、以下の点です。

論理演算とは

使う数字は「0」と「1」だけ

計算のルールは「OR演算」・「AND演算」・「NOT演算」・「XOR演算」の4つ

論理演算には足し算や引き算といったルールはありません。使う数字も「0」と「1」の2つだけです。

四則演算で使う「+」や「-」の記号は、論理演算には登場しません。代わりに出てくるのが「v」や「」といった記号です。

例えば、論理演算では「1 v 0」は「1」となり、「1 0」は「0」となります。

この論理演算のルールは、イギリスの数学者ジョージ・ブール(1815~1864)が考えました。

四則演算という便利なルールがあったにもかかわらず、ブールはなぜ、新たなルールを作り出す必要があったのか。

詳しい説明は割愛しますが、論理演算で計算の対象としたのは物事の数ではなく、言ってみれば物事の状態です。

四則演算で「1」という数字は、何かが一つあることを指します。

一方、論理演算では「1」と「0」は、四則演算ように物事の数を表していません。

論理演算では「1」と「0」は、ある物事が「ある」のか、「ない」のか。「ON」なのか、「OFF」なのか。「真」なのか、「偽」なのかといった状態を表す記号として使われています。

論理演算は、天才数学者が考えた計算のルールです。

私たち一般人が「なぜ、そういうルールになるのか」を考え出すと深みにはまります。

ここでは「四則演算」以外にも「論理演算」という別の計算のルールがある。それを理解できればOKです。

「0」と「1」という2つの数字だけを使う論理演算という計算のルール。

ややこしいだけの計算ルールに思えますが、実はこの考え方がコンピュータの力の源泉なのです。

論理演算の活用 オンとオフを管理する

四則演算で計算できるのは「物事の数」ですが、論理演算で計算できるのは「物事の状態」です

四則演算で計算結果が「5」であれば、計算する対象のものが「5つ」あるという理解になります。

一方、論理演算の計算結果は「0」と「1」だけ。

論理演算で表すことができるのは計算の対象となるものが「0」の状態なのか「1」の状態なのか、ということです。

論理演算が一体何の役に立つのか。そう思ってしまいますが、実はこの計算のルールが非常に便利なのです。

例えば、ディスプレイの表示について考えてみます。

美しい画像や滑らかな動画を映し出すディスプレイですが、その正体は画素を呼ばれる無数の細かい点の集まりです。

一つ一つの画素が点灯することで映像を表現しています。

以下のイラストは、ディスプレイの仕組みを簡略化したものです。

画素が「0」であれば画素は点灯せず(OFF)、「1」になると点灯する(ON)仕組みです。

イラスト左側は何も表示されていない「OFFの状態」。

画素の状態を数字で表すと「000(1段目)/000(2段目)/000(3段目)/000(4段目)/000(5段目)」となります。

一方、右側はすべて点灯している「ONの状態」。これは、画素の状態が「111/111/111/111/111」となっています。

このように「数字」と「画素の点滅」を連携させることで、ディスプレイの表示をコントロールできます。

では、このディスプレイに「5」を表示させたい場合は数字をどのように並べればよいでしょうか。

答えは「111(1段目)/100(2段目)/111(3段目)/001(4段目)/111(5段目)」です。

では、ディスプレイに「4」という数字を表示させたい場合はどうでしょうか。

答えは「101/101/111/001/001」です。

ディスプレイが「表示なし」から「5」へ、そして「4」へ変わるとき、画素の点滅をさせる数字は以下のように変わります。

つまり、上の図のように数字を変えることが出来れば、「表示なし」→「5」→「4」と、ディスプレイを変化させることができます。

では、この数字を機械的に変えるためにはどうすればいいでしょうか。

「5を表示して!」なんて言っても機械は動いてくれません。

機械でも実現できるような数字を変化させるルールが必要になります。

そこで利用できるのが、論理演算の計算ルールです。

改めて論理演算のルールを振り返ります。

例えば、ディスプレイに「5」を表示する場合。

「000/000/000/000/000」(表示なし)に、どんな数で、どんな計算をすれば計算結果を「111/100/111/001/111」(5)にすることができるでしょうか。

これは私たちに馴染みのある四則演算でいうと「6という数があった時に、どんな数でどんな計算をすれば、結果が4になるのか」という問題を解くのと同じです。

このときの正解は「6から2を引き算すると4になる」です。

同じように計算を解くと、ディスプレイを5に変えるには、「000/000/000/000/000」と「111/100/111/001/111」を、OR演算すると「111/100/111/001/111」になります。

5と表示されたディスプレイを4に変えるには、「111/100/111/001/111」(「5」)と「010/001/000/000/110」とXOR演算すると「101/101/111/001/001」(「4」)になります。

すぐには計算できませんが、論理演算の4つのルールに照らしながら、数字を確認してみてください。すべての数字が、一定のルールに基づいて変化しています。

このように論理演算のルールを利用することで、ディスプレイの表示を変えることができるのです。これを高速に表示を変えれば「動画」をディスプレイに映すことも可能になります。

コンピュータでは、ディスプレイの表示以外にも論理演算で数字(データ)を変化させることで、様々な機能を実現しています。

「パソコンの機能」と「計算」に、なぜ関係があるのか、ご理解いただけたでしょうか。

コンピュータで行う計算はもちろん人間にもできますが、コンピュータを動かす計算は膨大にあります。

人間がいちいち計算を行っていたら、ディスプレイに文字を表示するのも遅くなり、利便性は損なわれてしまいます。

大量に高速に計算を行うことができる電子計算機が登場したことで、人間が遅いと感じることなくディスプレイの表示を変えることが可能となったのです。

まとめ

・コンピュータの意味は「人間の計算手」から「電子計算機」に変わった。

・計算には「四則演算」と「論理演算」がある。

・論理演算が計算するのは「ON」と「OFF」など物事の状態。

・論理演算でデータ(数字)を変化させることで、コンピュータは様々な機能を実現している。