用語解説

あなたはアナログ思考?デジタル思考? 違いは“曖昧さ”   

「私は考え方がアナログなので」

こんな言葉を耳にしたり、口にしたりした経験はありませんか。

主に「パソコンやデジタル機器を活用できない」という意味で使われることが多い表現ですが、実はそうした意味だけではありません。

アナログ思考デジタル思考では、本質的に物事の捉え方に違いあります。

端的に言えば、アナログ思考は物事の差に曖昧さを残し、デジタル思考は物事の差を細かく区別します。

どちらが正しいということではなく、普段私たちは必要に応じて無意識のうちにこの2つの思考を使い分けているのです。

この記事では実例を交えて、アナログ思考とデジタル思考についてわかりやすく解説します。

デジタルとアナログの違い

まず、アナログとデジタルの違いについておさらいします。

こちらの記事でも解説しましたが、アナログもデジタルも物事の表現手法を指します。

表現するとは「置き換える」ということです。

例えば、時計は時間という形のないものを可視化する道具です。

アナログ時計は、時間を針や砂という物理的な物の動きに置き換えています。

一方、デジタル時計は時間を数字に置き換えます。

置き換える手段に物理的なものを使うのか、数字を使うのかという点がアナログとデジタルの大きな違いです。

<表現手段>
アナログ:物理的なもので表現
デジタル:数字で表現

曖昧さを残すアナログ どこまでも差別化できるデジタル

このように表現の仕方に違いがあるアナログとデジタル。

では、アナログで表現されるものとデジタルで表現されるものには、どのような違いがあるのでしょうか。

両者の特長的な違い一つが、表現するものの差がはっきりしているかどうかです。

例えば、以下のアナログ時計のイラストをご覧ください。

2つの時計が、それぞれ何時何分を指しているのかお分かりでしょうか。

左の画像は10時12分を、右の画像は10時13分を指しています。

このように「10時12分」「10時13分」と数字を使ったデジタルで表記すれば、明確に1分という差があることが分かります。

ただ、実際見て分かるようにアナログ時計では細かな差ははっきりせず曖昧になります。

人によっては、ほぼ同じ時間を指していると捉える人もいるでしょう。

一方、アナログでは差が曖昧なものでも、デジタルでははっきり区別して表現することができます。

人間の思考は時にアナログ的で時にデジタル的

こうしたアナログとデジタルの特長を踏まえて、「アナログ思考」と「デジタル思考」は次のような思考を指します。

アナログ思考:物事の差をあいまいに捉える

デジタル思考:物事の差を細かく区別する

アナログ思考とデジタル思考は、どちらが良いということではありません。

実は私たちは普段、必要に応じて無意識にこの2つの思考を使い分けています。

例えば、雨について考えてみます。

皆さんは雨にいくつ種類があるか考えたことはあるでしょうか。

気象状況によって雨の降り方は千差万別ですが、多くの人が雨が降っても「強い」か「弱い」か。そのくらいの区別しかしていないのではないでしょうか。

ただ、気象庁は雨の種類を1時間当たりの降水量に応じて6種類に分けています。

<気象庁の雨の区分>

:10mm未満/h

やや強い雨:10mm以上~20mm未満/h

強い雨:20mm以上~30mm未満/h

激しい雨:30mm以上~50mm未満/h

非常に激しい雨:50mm以上~80mm未満/h

猛烈な雨:80mm以上~/h

気象庁HPを参考に作成

気象庁の雨の捉え方と比較したとき、雨を「強い」か「弱い」かの2種類でしか表現しないのはアナログ的な思考と言えます。

気象庁の方がよりデジタル的です。

一方、日本語には「霧雨」や「小雨」、「夕立」など雨を表現する言葉がたくさんあります。

その数は数百に上るとも言われています。

雨の強さだけではなく、時間帯や場所の違いによって、雨を区別して使い分けているのです。

雨を数百にも区別することは、気象庁の捉え方より、さらにデジタル的です。

日常生活を送る上では、雨が「強い」か「弱い」か程度のアナログ的な捉え方だけで十分です。

ただ、災害情報を適切に発信する立場にある気象庁や言葉を生業しているような人には、雨をもっと細かく区別して捉える必要があります。

このほかの事柄についても、人によってアナログ思考で捉えるのか、デジタル思考で捉えるのか、必要に応じて使い分けています。

まとめ>

アナログ思考:物事の差をあいまいに捉える

デジタル思考:物事の差を細かく区別する


人は必要に応じて2つの思考を使い分けている