こんにちは。よちよちデジタルです。
IT人材を目指す人に実務に役立つ知識を解説する連載「使える!ITパスポート」。
今回、取り上げるのは「OODAループ」 です。
OODAループはITパスポート試験の最新シラバスVer.5.0から新たに追加された知識です。
OODAループは環境の変化が激しい現代のビジネスにこそ求められる思考のフレームワークとして、近年注目されています。
同じ思考法の1つに「PDCAサイクル」がありますが、PDCAサイクルは業務を改善していくことに主眼を置く一方で、OODAループは、そもそもどんな目的でどんな業務を行えばよいのかを決定するために役に立ちます。
OODAループとは
「観察」「情勢判断」「意思決定」「行動」
OODAループは、「ウーダループ」と読みます。「オーダループ」ではありません。
OODAとは「観察(Observe)」、「情勢判断(Orient)」、「意思決定(Decide)」、「行動(Act)」の頭文字をとったものです。
プロジェクトや業務を遂行する際に役に立つ思考のフレームワーク(枠組み)の一つです。
具体的には、それぞれの段階で以下のことを行います。
観察(Observe)
情勢判断や意思決定、行動につながるあらゆる情報を収集する
行動(Act)
観察で得た情報や情勢判断に基づいて、実際に行動する
軍事戦略からビジネスまで応用できる
OODAループを考案したのはアメリカの軍事戦略家、ジョン・R・ボイド(1927~97年)氏です。
Wikipediaより引用
ボイド氏は アメリカ軍の元パイロット。
空中の戦闘では、いつも短時間で勝利を収めることから“40秒のボイド”というニックネームで呼ばれた凄腕だったそうです。
現役を引退したのち、軍事戦略家として独自の研究を続けたボイド氏が、晩年に考案したのがOODAループです。
当初はアメリカの海兵隊など軍隊の中で使われていた思考のフレームワークでした。目まぐるしく状況が変わる戦場で勝ち抜くために、より早く的確な行動をとるために必要とされていたようです。
しかし、近年、ビジネスでもその有用性に注目が集まるようになっています。
こうした背景から、ITパスポート試験にも2021年4月から適用されている最新シラバスVer.5.0から、OODAループが追加されました。
PDCAサイクルとの違い
PDCAサイクルとは
さて、こうした行動の手順を示すフレームワークで有名なものの一つに「PDCAサイクル」があります。
計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)の頭文字をとって、こう呼ばれています。
多くの企業で採用されている考え方であり、実行している方も多いのではないかと思います。
PDCAサイクルも業務を進める際に役に立つフレームワークです。
OODA とPDCAを使い分ける
では、OODAループとPDCAサイクルの違いは何でしょうか。OODAがPDCAにとって代わるものなのでしょうか。
この点に関して、「OODA LOOP(東洋経済新報社、2019)」では、次のように述べられています。
OODAループは、PDCAサイクルとは対極的なものであり、両者の使い分けとバランスが大事であるにもかかわらず、実務ではPDCAサイクルが偏重される傾向が強い
p320
PDCAサイクルは不確実性が低く、定型的な業務では必須のものである。一方、不確実性が高く、非定形的業務ではOODAループのほうが望ましい
p345
ここで注目したいのは、OODAとPDCAを使い分けるという視点です。
OODAとPDCAは、どちらかが優れているフレームワークなのではなく、目的に合わせて使い分けることが重要になります。
私が考える目的に応じた使い分けは以下の通りです。
目的 | OODAループ | PDCAサイクル |
状況の変化に応じて柔軟に行動したい | 〇 | × |
行動の手順や質を改善したい | × | 〇 |
OODAを使う場面
OODAループはやるべき業務が事前に分からなかったり、業務の目的や方向性が頻繁に変わったりするような現場で、業務やその目的を決める際に有効です。
OODAが最終的な目標としているのがAにあたる行動(Act)です。
私たちは普段、目的地が分かっていれば、街中をスタスタと歩くことができます。
ただ、道に迷った場合は、立ち止まって今後の行動を考える必要が出てきます。
辺りを見渡して、手がかりになるものがないか探して(=観察)、それでも道に迷いそうだったら、約束の時間に遅れてしまうことを意識し始めます(=情勢判断)。
その上で、確実に目的地に辿りつくためにタクシーに乗ることを決めて(=意思決定)、タクシーをつかまえられそうな大通りを目指す(=行動)。
こうした行動も選択肢の一つです。
柔軟に状況に対応して、立ち止まる時間をできるだけ短くする。そのために有効なのが、OODAループです。
PDCAを使う場面
さて、同じ道に迷った場面を想定した場合、PDCAサイクルの使いどころは、どこになるでしょうか。
この答えは、PDCAとOODA、それぞれに含まれている「A」に注目するとわかります。
PDCAサイクルで最終的な目標になっているのが Aにあたる改善(Act) です。
OODAとPDCAともに最後の項目はActですが、OODAのAが「行動」を意味するのに対して、PDCAはのAは「改善」を指しています。
つまり、OODAループは複数の選択肢から一つの行動を選び取ることを目的にしているのに対して、PDCAサイクルは取るべき行動は決めた上で、その行動の改善、質の向上を目指しています。
PDCAサイクルは、もともと作業が決まっている工場の生産工程を改善するなどの目的で考案されたといいます。
さて、さきほど例に挙げた道に迷った場面では、OODAループを用いて最終的に選んだ行動は「タクシーをつかまえらそうな大通りを目指す」というものでした。
この行動の改善にPDCAサイクルを活用することができます。
この場面では、確実に目的地に辿りつくためにタクシーに乗ることを決めて(=計画)、タクシーをつかまえられそうな大通りを目指しました(=実行)。
しかし、この行動で確実にタクシーをつかまえられるかというと不安は残ります。大通りにたどり着いても、タクシーが通るか分からないからです。例え、タクシーが通りかかったとしても、すでに他の客が乗っている可能性もあります(=評価)。
そこで、次回からより確実にタクシーに乗るためにスマホに配車アプリをダウンロードしてみても良いかもしれません(=改善)。大通りを目指さなくても、GPSの位置情報を活用して現在地まで来てもらえます。
このようにOODAループのA(行動)を改善するために、PDCAサイクルを活用することができます。
まとめ
▶OODAループとは「観察(Observe)」、「情勢判断(Orient)」、「意思決定(Decide)」、「行動(Act)」
▶OODAループとPDCAサイクルは使い分けが重要。OODAは複数の選択肢の中から一つの行動を選び取る場合に、 PDCAは決められた行動の改善をする場合に有効。
用語解説
OODAループとPDCAサイクルの違い
こんにちは。よちよちデジタルです。
IT人材を目指す人に実務に役立つ知識を解説する連載「使える!ITパスポート」。
今回、取り上げるのは「OODAループ」 です。
OODAループはITパスポート試験の最新シラバスVer.5.0から新たに追加された知識です。
OODAループは環境の変化が激しい現代のビジネスにこそ求められる思考のフレームワークとして、近年注目されています。
同じ思考法の1つに「PDCAサイクル」がありますが、PDCAサイクルは業務を改善していくことに主眼を置く一方で、OODAループは、そもそもどんな目的でどんな業務を行えばよいのかを決定するために役に立ちます。
OODAループとは
「観察」「情勢判断」「意思決定」「行動」
OODAループは、「ウーダループ」と読みます。「オーダループ」ではありません。
OODAとは「観察(Observe)」、「情勢判断(Orient)」、「意思決定(Decide)」、「行動(Act)」の頭文字をとったものです。
プロジェクトや業務を遂行する際に役に立つ思考のフレームワーク(枠組み)の一つです。
具体的には、それぞれの段階で以下のことを行います。
情勢判断や意思決定、行動につながるあらゆる情報を収集する
観察で収集した情報に基づいて、現状を把握する
情勢判断に基づいて、取るべき行動の方向性を決める
観察で得た情報や情勢判断に基づいて、実際に行動する
軍事戦略からビジネスまで応用できる
OODAループを考案したのはアメリカの軍事戦略家、ジョン・R・ボイド(1927~97年)氏です。
ボイド氏は アメリカ軍の元パイロット。
空中の戦闘では、いつも短時間で勝利を収めることから“40秒のボイド”というニックネームで呼ばれた凄腕だったそうです。
現役を引退したのち、軍事戦略家として独自の研究を続けたボイド氏が、晩年に考案したのがOODAループです。
当初はアメリカの海兵隊など軍隊の中で使われていた思考のフレームワークでした。目まぐるしく状況が変わる戦場で勝ち抜くために、より早く的確な行動をとるために必要とされていたようです。
しかし、近年、ビジネスでもその有用性に注目が集まるようになっています。
こうした背景から、ITパスポート試験にも2021年4月から適用されている最新シラバスVer.5.0から、OODAループが追加されました。
PDCAサイクルとの違い
PDCAサイクルとは
さて、こうした行動の手順を示すフレームワークで有名なものの一つに「PDCAサイクル」があります。
計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)の頭文字をとって、こう呼ばれています。
多くの企業で採用されている考え方であり、実行している方も多いのではないかと思います。
PDCAサイクルも業務を進める際に役に立つフレームワークです。
OODA とPDCAを使い分ける
では、OODAループとPDCAサイクルの違いは何でしょうか。OODAがPDCAにとって代わるものなのでしょうか。
この点に関して、「OODA LOOP(東洋経済新報社、2019)」では、次のように述べられています。
ここで注目したいのは、OODAとPDCAを使い分けるという視点です。
OODAとPDCAは、どちらかが優れているフレームワークなのではなく、目的に合わせて使い分けることが重要になります。
私が考える目的に応じた使い分けは以下の通りです。
OODAを使う場面
OODAループはやるべき業務が事前に分からなかったり、業務の目的や方向性が頻繁に変わったりするような現場で、業務やその目的を決める際に有効です。
OODAが最終的な目標としているのがAにあたる行動(Act)です。
私たちは普段、目的地が分かっていれば、街中をスタスタと歩くことができます。
ただ、道に迷った場合は、立ち止まって今後の行動を考える必要が出てきます。
辺りを見渡して、手がかりになるものがないか探して(=観察)、それでも道に迷いそうだったら、約束の時間に遅れてしまうことを意識し始めます(=情勢判断)。
その上で、確実に目的地に辿りつくためにタクシーに乗ることを決めて(=意思決定)、タクシーをつかまえられそうな大通りを目指す(=行動)。
こうした行動も選択肢の一つです。
柔軟に状況に対応して、立ち止まる時間をできるだけ短くする。そのために有効なのが、OODAループです。
PDCAを使う場面
さて、同じ道に迷った場面を想定した場合、PDCAサイクルの使いどころは、どこになるでしょうか。
この答えは、PDCAとOODA、それぞれに含まれている「A」に注目するとわかります。
PDCAサイクルで最終的な目標になっているのが Aにあたる改善(Act) です。
OODAとPDCAともに最後の項目はActですが、OODAのAが「行動」を意味するのに対して、PDCAはのAは「改善」を指しています。
つまり、OODAループは複数の選択肢から一つの行動を選び取ることを目的にしているのに対して、PDCAサイクルは取るべき行動は決めた上で、その行動の改善、質の向上を目指しています。
PDCAサイクルは、もともと作業が決まっている工場の生産工程を改善するなどの目的で考案されたといいます。
さて、さきほど例に挙げた道に迷った場面では、OODAループを用いて最終的に選んだ行動は「タクシーをつかまえらそうな大通りを目指す」というものでした。
この行動の改善にPDCAサイクルを活用することができます。
この場面では、確実に目的地に辿りつくためにタクシーに乗ることを決めて(=計画)、タクシーをつかまえられそうな大通りを目指しました(=実行)。
しかし、この行動で確実にタクシーをつかまえられるかというと不安は残ります。大通りにたどり着いても、タクシーが通るか分からないからです。例え、タクシーが通りかかったとしても、すでに他の客が乗っている可能性もあります(=評価)。
そこで、次回からより確実にタクシーに乗るためにスマホに配車アプリをダウンロードしてみても良いかもしれません(=改善)。大通りを目指さなくても、GPSの位置情報を活用して現在地まで来てもらえます。
このようにOODAループのA(行動)を改善するために、PDCAサイクルを活用することができます。
まとめ
▶OODAループとは「観察(Observe)」、「情勢判断(Orient)」、「意思決定(Decide)」、「行動(Act)」
▶OODAループとPDCAサイクルは使い分けが重要。OODAは複数の選択肢の中から一つの行動を選び取る場合に、 PDCAは決められた行動の改善をする場合に有効。