
この記事ではITパスポートのストラテジ系で学ぶ「貸借対照表」について解説します。
「自分の会社も貸借対照表をつくってるけど、見方がわからない」
「そもそも会計の基礎知識が知りたい」
そんな方に向けて違いをわかりやすく解説します。
企業が決算で公表する貸借対照表は箇条書きのものが多く分かりづらくなっています。
これを「ブロック図」という手法を用いて情報化することで、より活用しやすくすることができます。
ブロック図では右側にお金を集めた方法、左側にお金の使い方をまとめます。
こうすることで企業の財務状況を簡単に把握することができます。
企業が行う2つの会計
「お会計お願いします」
飲食店で食事を終えるときの定番の台詞ですが、会計とは以下の活動を指します。
お金や物などのやり取りを記録すること
私たちにもっとも身近な会計は家計です。
家計は家族だけを対象にして「いつ、どんなものをいくらで買ったか」を記録します。
ただ、企業が行う会計には大きく分けて2つの種類があります。
それが財務会計と管理会計です。
この2つを分ける大きなポイントは「誰のための記録か」という視点です。
管理会計の目的は会計の記録を企業の経営判断に生かすことです。つまり、「企業の内部向け」と言えます。
企業の内部に向けたものであるため、管理会計のための資料の書き方は自由です。
一方、財務会計の目的は企業の経営状況を企業以外の人に理解してもらうことです。これは、「企業の外部向け」と言えます。
財務会計の資料は財務諸表と言われ、企業側は会計基準に沿って作成することが求められています。
企業によって書類のフォーマットが違うと他社と比較ができず混乱してしまうので、統一されています。
管理会計:企業の内部で経営判断に生かすことが目的⇒資料のまとめ方は自由
財務会計:企業の外部に経営状況を理解してもらうことが目的⇒会計基準に沿った統一書式がある
この財務会計のために作られる財務諸表の一つが、貸借対照表です。
賃借対照表の読み解く技術
企業の外部向けに行う財務会計で作成する資料には、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などがあります。
この中でも貸借対照表(バランスシート)は「企業の健康診断表」とも言われ、企業の財政状態を示す重要な資料になります。
貸借対照表には大きく分けて「資産」・「負債」・「純資産」が記載されています。
こちらがトヨタ自動車が決算で公開するために作成した貸借対照表です。
「・・・・・・・」
いかかでしょうか。
貸借対照表は企業の健康診断表と言われても、この資料をみてトヨタ自動車がどんな状態にあるのか、すぐに理解できたでしょうか。
財務の経験者でもないとなかなか難しいのではないかと思います。
このように多くの企業が作成する貸借対照表は箇条書きされていて分かりにくくなっています。
貸借対照表から企業の財政状態を示す情報を読み解くにはコツがいります。
そこで重要になるのが、次の2つです。
▶貸借対照表をボックス図に変換する
▶「資産」・「負債」・「純資産」の意味を理解する
貸借対照表をボックス図に落とし込む
ボックス図とは以下のような図を指します。
左側に「資産」、右側の上段に「負債」、下段に「純資産」を配置します。

ここで重要なのは貸借対照表では「資産=負債+純資産」という計算式が成り立つことです。
各ボックスの面積は、それぞれの要素の金額の大きさによって変化しますが、全体の大きさは変わりません。
箇条書きされた貸借対照表の金額を、こうしたボックス図に落とし込むことで、企業の財務状況を可視化することができます。
「資産」・「負債」・「純資産」の意味
ところで貸借対照表では「資産=負債+純資産」という計算式が成り立つと説明しましたが、なぜそう考えることができるのでしょうか。
「負債も資産なの?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。
ここで理解を進めるためには、「資産」・「負債」・「純資産」という言葉を次のように捉えます。
「負債」・「純資産」=お金を集めた方法
「資産」=集めたお金の使い方

銀行などから借りたお金は「負債」にあたり、企業自らが用意したお金は「純資産」になります。
そうして集めたお金で企業が購入した土地や機械などが「資産」に含まれます。
ブロック図の右側で集めたお金が左側で資産として物に置き換わっていると理解すれば、「資産=負債+純資産」の計算式にも納得がいくのではないでしょうか。
トヨタ自動車の財務状況を分析してみよう
トヨタ自動車が公表している貸借対照表をブロック図に変換したのがこちら。

(2020年3月期決算報告書から作成、100億円以下切り捨て)
上のブロック図は数字をわかりやすくするために100億円以下は切り捨てたため、資産の額が負債と純資産の合計よりも1000億円多くなっています。この点はご容赦ください。
トヨタ自動車の資産は約54兆円。日本の国家予算が106兆円ですから、改めてトヨタの巨大企業ぶりがわかります。
貸借対照表には資産・負債・純資産の3つの要素があるとお伝えしましたが、資産と負債は「流動的か固定的か」という基準でさらに細かく分けることができます。
流動資産:1年以内に現金にすることができる資産
固定資産:1年を超えて長期間保有する資産
流動負債:支払い期限が1年以内の負債
固定負債:支払い期限が1年を超える負債
これでブロック図に以上の要素を書き入れたら準備完了です。
この図からトヨタ自動車の財務状況について、様々なことが分かります。
自己資本比率
まず「自己資本比率」に注目してみます。
自己資本比率とは企業が集めたお金のうち、返済の必要がないお金の割合を示した指標です。
貸借対照表では以下の計算式で求めることができます。
自己資本比率=純資産÷(負債+純資産)×100
トヨタ自動車の自己資本比率は(純資産21兆2000億円÷負債と純資産の合計53兆9000億円)×100=39.3%と求めることができます。
一般的に自己資本比率が40%を超えると財務的に安定していると言われていますので、トヨタ自動車もほぼその水準であることが分かります。
流動比率
貸借対照表から「流動比率」を求めることもできます。
流動比率=(流動資産÷流動負債)×100
流動比率とは1年以内に支払い期限がある負債を、1年以内に現金化できる資産でどの程度支払うことができるのかを示す指標です。
流動比率が高いほど、その会社の支払い能力が高いことを意味します。
トヨタ自動車の場合は(流動資産19兆6000億円÷流動負債18兆9000億円)=103%
流動比率は100%を下回ると支払い能力の問題があるとされていて、トヨタはギリギリ上回っているという状況です。
固定比率
最後に紹介するのが「固定比率」です。
固定比率=(固定資産÷純資産)×100
固定比率とは建物や機械などの固定資産を企業が自ら集めた純資産でどの程度賄っているかを示す指標です。
固定比率が100%を超えると過剰な設備投資を行っていると判断することができます。
トヨタ自動車の固定比率は(固定資産34兆3000億円÷純資産21兆2000億円)×100=162%
自ら集めたお金の半分以上にあたる額を借金して設備投資を行っていることがうかがえます。
まとめ
・会計とはお金や物などのやり取りを記録すること
⇒管理会計:企業の内部で経営判断に生かすことが目的
⇒財務会計:企業の外部に経営状況を理解してもらうことが目的
・貸借対照表を読み解くにはブロック図を使う
⇒右側にお金を集めた方法、左側にお金の使い方を記載する