きょうは「情報」という言葉について、解説します。
「情報化社会」・「〇〇大学情報学部」など、あちらこちらで使われている「情報」という言葉。
でも、疑問に思ったことはないでしょうか。
情報とは英語で「インフォメーション」、つまり「お知らせ」ということです。
この意味に照らせば、「お知らせ化社会」・「お知らせ学部」という理解でいいのでしょうか。
結論を先に言えば、「情報」は「お知らせ」という意味だけはありません。
情報という言葉には、「お知らせ」以外にも違う意味があります。
この記事では情報とは何なのか、わかりやすく解説します。
「情報」への理解を深めて、IT人材に近づきましょう。
知っていますか?「情報」の2つの意味
まず「情報」という言葉の意味を、辞書で確認してみます。
【情報】
①ある事柄の内容や事件などについての知らせ
②文字・記号・音声など,種々の媒体によって伝達され,受け手の判断・行動などのよりどころとなる知識や資料
明鏡国語辞典
「情報」という言葉に、2つの意味がある。まず、その点に驚きを感じないでしょうか。
一般的に「情報」と聞けば、①の「ある事柄の内容や事件などについての知らせ」という意味で理解することが多いからです。
「良い情報を聞いた」、「この商品の情報がもっと欲しい」。
このような会話で使う情報という言葉の意味は、①を指しています。
一方で、あまり馴染みがないのが2つ目の意味である「文字・記号・音声など,種々の媒体によって伝達され,受け手の判断・行動などのよりどころとなる知識や資料」です.
この意味はどのように理解すればよいのでしょうか。①との違いは、何なのでしょうか。
この意味を理解するポイントは「情報」=「文字や言葉そのものではない」という点です。
文字や言葉は、情報を伝えるためのただの器に過ぎません。
この点を理解すると、②がどんな意味を指しているのか分かるようになります。
バスチェアも「情報」!? 情報を伝えるのは文字や音声だけではない
突然ですが、我が家では最後にお風呂に入ったひとが浴槽を洗う決まりになっています。
そして、洗ったら浴槽の縁にバスチェアを引っ掛けます。
次の日の夜、バスチェアが浴槽に引っ掛けてあれば、他の家族は「浴槽の掃除は終わっている」と判断して、すぐにお湯をためます。
ほかの家庭でも見られる日常的な風景かと思います。
さて、ここが大事なポイントです。
この場合、浴槽に引っ掛けてあるバスチェアには「情報がある」ということができます。
もう一度、情報の意味をおさらいします。情報には2つの意味があります。
【情報】
①ある事柄の内容や事件などについての知らせ
②文字・記号・音声など,種々の媒体によって伝達され,受け手の判断・行動などのよりどころとなる知識や資料
明鏡国語辞典
辞書に載っている2つ目の意味「文字・記号・音声など,種々の媒体によって伝達され,受け手の判断・行動などのよりどころとなる知識や資料」は、このような状態を指しているのです。
「浴槽の掃除は終わっている」という情報が、バスチェアという媒体によって伝達され、家族の判断のよりどころとなっているからです。
ここでのポイントは「浴槽の掃除は終わっている」という情報が、文字や音声以外で受け手に伝えられていることです。
私たちが普段、情報を伝えるために使っている媒体は「文字」や「音声」です。
そのため、「文字や音声」=「情報」と考えてしまいがちですが、そうではありません。
情報とは形のない抽象的な知識やイメージのことです。
文字や音声は形のない「情報」を見たり聞いたりするための器に過ぎません。
日常生活では文字や音声で情報を伝えることが当たり前ですが、情報を伝える器が「バスチェア」であっても、もちろん良いのです。
「情報」は「媒体」+「情報を引き出す仕組み」で伝わる
ここまで、情報とは形のない抽象的なもので、それを人間が見たり聞いたりするためには媒体=器が必要だという話をしてきました。
この器には文字や音声、バスチェアのほかにも、色や振動、人間が感じることができるものは何でも当てはまります。
ただ、どんな器を使っても、実際に情報を伝えるためにはもうひとつ重要な要素があります。
それが、「器から情報を引き出す仕組み」です。
「リンゴ」を文字で書いても、声に出しても、伝わる情報は同じです。
ただ、これは受け手が日本語を理解している場合に限ります。
日本語を理解しない人に「リンゴ」と文字で書いても、声に出しても、あの丸い赤い果物のことを伝えることはできません。
日本語を知らない人にとっては,「リンゴ」という文字はただの記号にしか見えず、「リンゴ」という音声を言葉として認識できないからです。
ちなみにアラビア語でリンゴは「تفاحة」です。モンゴル語だと「алим」と書きます。
さきほど、例に出した浴槽のバスチェアについても同じことが言えます。
浴槽に引っ掛けてあるバスチェアから、「浴槽の掃除は終わっている」という情報を引き出す。
これができるのは私の家族だけです。ほかの人が浴槽をみても、ただバスチェアがあるとしか思いません。
情報を持っている媒体(器)から、情報を引き出す仕組みを共有していないからです。
こう考えると、情報を伝えるという行為は以下の場合に成り立つものだと言えます。
情報を伝えるには
「人間が感じることができる媒体」+「情報を引き出す仕組みの共有」 が必要
言語は伝えたい情報を、豊富に盛り込むことができる便利な媒体です。
ただ、同じ言語を理解してなければ、そこから情報を読み取ることはできません。
一方で、情報を引き出す仕組みさえ共有していれば、我が家のようにバスチェアを媒体して情報を伝えることもできます。
情報とはこのように「媒体」と「情報を引き出す仕組み」次第で、柔軟にその姿を変えられるものです。
こうした仕組みを利用したのが「情報化社会」であり、それを研究するのが「情報学部」と考えることができます。
まとめ
・情報には2つの意味がある
・情報は文字や音声だけで伝えるとは限らない=媒体は何でもよい
・情報を伝えるには「媒体」と「情報を引き出す仕組み」が必要
用語解説
「情報」とはなんだろう?「お知らせ」と違いはあるの?
きょうは「情報」という言葉について、解説します。
「情報化社会」・「〇〇大学情報学部」など、あちらこちらで使われている「情報」という言葉。
でも、疑問に思ったことはないでしょうか。
情報とは英語で「インフォメーション」、つまり「お知らせ」ということです。
この意味に照らせば、「お知らせ化社会」・「お知らせ学部」という理解でいいのでしょうか。
結論を先に言えば、「情報」は「お知らせ」という意味だけはありません。
情報という言葉には、「お知らせ」以外にも違う意味があります。
この記事では情報とは何なのか、わかりやすく解説します。
「情報」への理解を深めて、IT人材に近づきましょう。
知っていますか?「情報」の2つの意味
まず「情報」という言葉の意味を、辞書で確認してみます。
「情報」という言葉に、2つの意味がある。まず、その点に驚きを感じないでしょうか。
一般的に「情報」と聞けば、①の「ある事柄の内容や事件などについての知らせ」という意味で理解することが多いからです。
「良い情報を聞いた」、「この商品の情報がもっと欲しい」。
このような会話で使う情報という言葉の意味は、①を指しています。
一方で、あまり馴染みがないのが2つ目の意味である「文字・記号・音声など,種々の媒体によって伝達され,受け手の判断・行動などのよりどころとなる知識や資料」です.
この意味はどのように理解すればよいのでしょうか。①との違いは、何なのでしょうか。
この意味を理解するポイントは「情報」=「文字や言葉そのものではない」という点です。
文字や言葉は、情報を伝えるためのただの器に過ぎません。
この点を理解すると、②がどんな意味を指しているのか分かるようになります。
バスチェアも「情報」!? 情報を伝えるのは文字や音声だけではない
突然ですが、我が家では最後にお風呂に入ったひとが浴槽を洗う決まりになっています。
そして、洗ったら浴槽の縁にバスチェアを引っ掛けます。
次の日の夜、バスチェアが浴槽に引っ掛けてあれば、他の家族は「浴槽の掃除は終わっている」と判断して、すぐにお湯をためます。
ほかの家庭でも見られる日常的な風景かと思います。
さて、ここが大事なポイントです。
この場合、浴槽に引っ掛けてあるバスチェアには「情報がある」ということができます。
もう一度、情報の意味をおさらいします。情報には2つの意味があります。
辞書に載っている2つ目の意味「文字・記号・音声など,種々の媒体によって伝達され,受け手の判断・行動などのよりどころとなる知識や資料」は、このような状態を指しているのです。
「浴槽の掃除は終わっている」という情報が、バスチェアという媒体によって伝達され、家族の判断のよりどころとなっているからです。
ここでのポイントは「浴槽の掃除は終わっている」という情報が、文字や音声以外で受け手に伝えられていることです。
私たちが普段、情報を伝えるために使っている媒体は「文字」や「音声」です。
そのため、「文字や音声」=「情報」と考えてしまいがちですが、そうではありません。
情報とは形のない抽象的な知識やイメージのことです。
文字や音声は形のない「情報」を見たり聞いたりするための器に過ぎません。
日常生活では文字や音声で情報を伝えることが当たり前ですが、情報を伝える器が「バスチェア」であっても、もちろん良いのです。
「情報」は「媒体」+「情報を引き出す仕組み」で伝わる
ここまで、情報とは形のない抽象的なもので、それを人間が見たり聞いたりするためには媒体=器が必要だという話をしてきました。
この器には文字や音声、バスチェアのほかにも、色や振動、人間が感じることができるものは何でも当てはまります。
ただ、どんな器を使っても、実際に情報を伝えるためにはもうひとつ重要な要素があります。
それが、「器から情報を引き出す仕組み」です。
「リンゴ」を文字で書いても、声に出しても、伝わる情報は同じです。
ただ、これは受け手が日本語を理解している場合に限ります。
日本語を理解しない人に「リンゴ」と文字で書いても、声に出しても、あの丸い赤い果物のことを伝えることはできません。
日本語を知らない人にとっては,「リンゴ」という文字はただの記号にしか見えず、「リンゴ」という音声を言葉として認識できないからです。
ちなみにアラビア語でリンゴは「تفاحة」です。モンゴル語だと「алим」と書きます。
さきほど、例に出した浴槽のバスチェアについても同じことが言えます。
浴槽に引っ掛けてあるバスチェアから、「浴槽の掃除は終わっている」という情報を引き出す。
これができるのは私の家族だけです。ほかの人が浴槽をみても、ただバスチェアがあるとしか思いません。
情報を持っている媒体(器)から、情報を引き出す仕組みを共有していないからです。
こう考えると、情報を伝えるという行為は以下の場合に成り立つものだと言えます。
情報を伝えるには
「人間が感じることができる媒体」+「情報を引き出す仕組みの共有」 が必要
言語は伝えたい情報を、豊富に盛り込むことができる便利な媒体です。
ただ、同じ言語を理解してなければ、そこから情報を読み取ることはできません。
一方で、情報を引き出す仕組みさえ共有していれば、我が家のようにバスチェアを媒体して情報を伝えることもできます。
情報とはこのように「媒体」と「情報を引き出す仕組み」次第で、柔軟にその姿を変えられるものです。
こうした仕組みを利用したのが「情報化社会」であり、それを研究するのが「情報学部」と考えることができます。
まとめ
・情報には2つの意味がある
・情報は文字や音声だけで伝えるとは限らない=媒体は何でもよい
・情報を伝えるには「媒体」と「情報を引き出す仕組み」が必要