子どもたちにも、従業員にもIT教育の必要性が叫ばれる昨今。
2020年からは小学校でプログラミング教育が必修化され、企業でも従業員のプログラミング研修を導入する事例も増加しています。
こうした状況に「ITスキルを身に着けるために、プログラミングを学ばなけば!」と考えている人も多いのではないでしょうか。
しかし、プログラミング言語を取得するのは容易ではありません。
文字列の洪水に、嫌気が差す人も大勢いるのが現実です。
ここで押さえておきたいのが、プログラミングはITスキルと呼ばれているものの一つで、他にも重要なITスキルはたくさんあるという点です。
プログラミングに向いていないと感じている人は、別のITスキルに目を向けてみてはいかがでしょうか。
記事のポイント
- プログラミングスキルはITスキルのひとつでしかない
- ITスキルとは「IT+ビジネス」の力
- プログラミングに向いていなければ、他のITスキルを鍛えよう
ITスキルの図鑑を見てみよう
ITスキルとは、そもそもどういった能力のことを指すのか。
実はITスキルに明確な定義はありません。
一般的にプログラミングやパソコンを動かす技術はITスキルと呼ばれますが、それだけなのでしょうか。
言葉通りに解釈すれば、ITは「情報活用技術」ですから、「情報」を「活用」している「技術」は、すべてITスキルと呼ぶことができます。
ただ、これでは漠然とし過ぎていて、何が重要かも分かりません。
そこで、ITパスポート試験を実施している情報処理推進機構(IPA)が、ITスキルと呼ばれるものを体系的にまとめた資料を作成しています。
それが「i コンピテンシ ディクショナリ(iCD)」です。IPAはこの資料について、以下のように説明しています。
「i コンピテンシ ディクショナリ」は、企業においてITを利活用するビジネスに求められる業務(タスク)と、それを支えるIT人材の能力や素養(スキル)を「タスクディクショナリ」、「スキルディクショナリ」として体系化したもの
IPAウェブサイトより
これはいわば「IT人材のスキル図鑑」です。
「i コンピデン シディクショナリ」では、体系化されたITスキルが一覧図になっています。

ITスキルは、それぞれの特性に基づいて「メソドロジ」、「テクノロジ」、「関連知識」、「ITヒューマンスキル」に分類されています。
メソドロジとはあまり聞き慣れない言葉ですが、英語で「方法論」という意味です。
テクノロジは、コンピュータを使って行うプログラミングなど、一般的に私たちがITスキルと捉えている能力です。
この図でまず注目したいのが、ITスキル全体のうち、プログラミングなどの「テクロノジ」スキルは、約半分にとどまるということです。赤枠で囲った範囲です。
この事実を意外に思われないでしょうか。
ITスキルとは、プログラミングのようなパソコンを使って難しい文字列を打つスキルと思われがちですが、実際はそれだけではないのです。
求められるITスキルとは「IT+ビジネス」の力
では、そのほかのITスキルとは、どういった能力なのか。
もう一度、一覧図を振り返ってみます。

テクノロジ以外のITスキルとして挙げられているのが、「メソドロジ」、「関連知識」、「ITヒューマンスキル」です。上の図で赤枠で囲った範囲のスキルになります。
これらのスキルについて、IPAは以下のように説明しています。
メソドロジカテゴリは、ITビジネス活動の様々な局面で発揮される手法、方法などで、発揮される対象領域が広く、汎用性、応用性が高いスキルを集めたものである。
関連知識のカテゴリは、ITビジネス活動の様々な局面で活用される、メソドロジ、テクノロジ以外の関連業務知識を集めたものである。
IT ヒューマンスキルは、ITビジネス活動の様々な局面で頻繁に発揮される基本スキルカテゴリである。
どれも定義が漠然としていますが、要するに「メソドロジ」、「関連知識」、「ITヒューマンスキル」とは、いわゆる「ビジネススキル」を指します。
なぜITスキルに、ビジネススキルが含まれるのかと言えば、企業でITを生かすために必ず必要になる能力だからです。
「テクノロジ」スキルは、ソフトウェアなどのITツールを開発するためには、欠かすことができないスキルです。
しかし、これだけでIT(情報を活用する)ができるわけではありません。
ITツールを有効に活用するために、使う目的を整理したり、使うための環境を整えたりする必要があります。そのために、テクノロジスキルとは別のスキルが必要になります。それが、いわゆるビジネススキルなのです。
ITツールとビジネススキルは、切っても切れない関係にあるのです。
こうした理由から、「テクノロジ」スキルと「ビジネス」スキルが合わさって、「ITスキル」と見なされているのです。
テクノロジ以外の汎用スキルを鍛える
ここまで、プログラミングなどの「テクノロジ」スキル以外に、「ビジネス」スキルもITスキルであることを解説してきました。
「プログラミングは自分には向いていない」
こう感じている人がいたら、プログラミングなどテクノロジ系のスキルの学習は一旦やめてみましょう。
そして、ビジネススキルや基礎的なテクノロジスキルの習得を目指してみてはいかがでしょうか。下の図で赤枠で囲った範囲にあるスキルです。
ITスキルはプログラミングだけではありません。他にも重要なスキルがいくつもあります。

特に図の下部に位置づけられているスキルは、「利用対象領域」が広い、つまり汎用性をもったスキルです。
ITを生かす仕事は、一人ではできません。なので、プログラミングができなくても、こうしたビジネススキルをもっていれば、IT業務に携わることは可能です。
プログラミングスキルが必要な職種は2割
「i コンピテンシ ディクショナリ」では、IT人材の職種を次のように分類しています。

IT人材の職種は、実に98種類。各職種に特に必要なスキルも一覧になっていて、分類されたスキルはあわせて443項目にも及びます。
この中で、プログラミングに関連するスキルは4項目あります。「プログラミング基礎技術」、「プログラミング」、「プログラム言語」、「その他の言語」です。
しかし、「i コンピテンシ ディクショナリ」の中で,このプログラミング関連のスキルが特に必要とされている職種は98職種中,19職種のみ。全体の2割ほどにとどまるのです。
重ねてになりなりますが、ITツールを作るには、プログラミングスキルは必要です。ただ、「i コンピテンシ ディクショナリ」から分かるのは、高度に専門的なプログラミングスキルを持っている人ばかりがIT人材ではないということです。
情報処理推進機構は、今の時代に求められているIT人材とは、ITとビジネスを融合させることができる人材だと強調しています。
IT融合人材とは、自社を取り巻く環境変化に柔軟に対応し、ITとビジネスを融合させることで新たな価値を生み出すことができる人材
出典:iCDオフィシャルサイト
昨今は「ITスキル=プログラミングスキル」のような風潮もありますが、IT人材になるための道は決して1本だけではありません。
まとめ
記事のポイント
- プログラミングスキルはITスキルのひとつでしかない
- ITスキルとは「IT+ビジネス」の力
- プログラミングに向いていなければ、他のITスキルを鍛えよう
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